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トライアンフのモダンクラシック、その中心に輝くボンネビルT120とスピードツイン1200。「いつかは乗りたい」と憧れを抱いている方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ購入を考えると、ボンネビルとスピードツインの違いが分からず、どちらが自分に合っているのか、頭を悩ませてしまいますよね。
見た目は似た兄弟車ですが、その乗り味や哲学はまったくの別物。この記事では、24年間バイクに乗り続けてきた私自身の経験と多角的な情報収集に基づき、この永遠のテーマともいえる2台の違いを徹底的に解き明かしていきます。
この記事を読むと分かること
- エンジンや足回りなど、2台を隔てる6つの根本的な違い
- 街乗りやツーリングなど、利用シーン別の得意・不得意
- スペック表だけでは分からない、それぞれの乗り味とキャラクター
- あなたがどちらを選ぶべきか、後悔しないための最終的な結論
単なるスペック比較だけでは見えてこない、両車が持つ本質的な魅力と、あなたのライフスタイルとの相性。この記事を最後まで読めば、あなたが選ぶべき究極の一台が、きっと見つかるはずです。
ボンネビルとスピードツインの根本的な違いは6つのポイントにあった

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トライアンフのモダンクラシックを代表するボンネビルT120とスピードツイン1200。カタログスペックだけを眺めていると、その違いは些細なものに思えるかもしれません。しかし、実はこの2台、ライダーが受け取るフィーリングやバイクとの付き合い方を決定づける、根本的な違いをいくつも抱えています。両者のキャラクターを形作る6つの核心的な違いを、一つひとつ丁寧に解き明かしていきましょう。この違いを深く理解することが、あなたにとって最高の一台を見つけるための、最も重要な近道となるはずです。
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①エンジン:低速の鼓動か、高回転のパワーか

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まず、両者の心臓部であるエンジンから見ていきましょう。ボンネビルT120とスピードツイン1200は、どちらも同じ1200ccの水冷並列2気筒エンジンを搭載しています。しかし、その味付けは驚くほど対照的です。
ボンネビルT120のエンジンは「高トルク型」と呼ばれるチューニングが施されています。最高出力は80PSですが、注目すべきは最大トルクの発生回転数。わずか3,100回転で105Nmという力強いトルクを発生させるのです。これは、アイドリングから少しアクセルを開けるだけで、地面を蹴り出すような豊かな鼓動感と加速を味わえることを意味します。街中をゆったり流したり、景色の良い道をトコトコと走ったりする場面では、この上ない心地よさを感じさせてくれるでしょう。
一方、スピードツイン1200は、同じエンジンでありながらよりスポーティな「高出力型」に。最高出力は100PSと、T120を20PSも上回ります。最大トルクの発生回転数も4,250回転とやや高め。これは、よりエンジンを回して走りを楽しむキャラクターであることを示しています。スムーズに吹け上がるエンジンフィールと、高回転域での伸びやかなパワーは、ライダーを高揚させ、ワインディングへと誘います。もちろん低速トルクが不足しているわけではなく、街中でも扱いやすい柔軟性を備えていますが、その真価はアクセルを大きく開けた先にあると言えそうです。

②足回りとブレーキ:快適ツーリング vs スポーツ性能
エンジンの次に大きな違いが現れるのが、足回りとブレーキです。両モデルが目指す方向性の違いが、装備面にも明確に表れています。
ボンネビルT120は、フロントにカートリッジ式の正立フォーク、ブレーキにはBrembo製の2ピストンキャリパーを採用しています。この組み合わせは、乗り心地の良さと素直なハンドリングを重視した、いわば王道のセッティング。路面の細かな凹凸をしなやかに吸収し、長距離を走っても疲れにくい快適性を実現しています。ブレーキもコントローラブルで、穏やかな制動力がT120のキャラクターによくマッチしています。
対するスピードツイン1200は、走りのパフォーマンスを追求した装備が与えられています。フロントフォークには、高い剛性を誇るマルゾッキ製の倒立フォークを採用。さらにブレーキには、レースシーンでもおなじみのBrembo製M50ラジアルモノブロックキャリパーが奢られています。これにより、ワインディングでの正確なライントレース性能と、強力かつ繊細なブレーキングが可能に。スポーツ走行を楽しみたいライダーにとっては、非常に魅力的なスペックと言えるでしょう。この足回りとブレーキこそ、スピードツインが「カスタムロードスター」と呼ばれる所以なのです。
③車重21kgの差:取り回しとコーナリングへの影響
バイク選びにおいて、車両重量は乗りやすさを左右する重要な要素です。ボンネビルT120の装備重量が237kgであるのに対し、スピードツイン1200は216kg。その差は実に21kgにも及びます。
この21kgの差は、あらゆる場面で体感することができます。まず、駐車場での取り回しやUターン。特にリターンライダーの方にとっては、車体の軽さは安心感に直結しますよね。スピードツインの軽さは、こうした日常的な場面でのストレスを大きく軽減してくれます。
そして、この差が最も顕著に現れるのがコーナリングです。スピードツインは、軽い車体を活かしてヒラヒラと軽快にコーナーをクリアしていきます。切り返しが連続するようなタイトなワインディングでは、まるで一クラス下のバイクを操っているかのような一体感を得られるでしょう。ボンネビルT120も決して鈍重なわけではありませんが、どちらかと言えばコーナーをゆったりと安定して駆け抜けるタイプ。スポーティな走りにおいては、スピードツインに軍配が上がります。この軽快感こそ、多くのライダーがスピードツインに惹かれる理由の一つなのです。

④ライディングポジションと足つき性の違い
快適性や操縦性に直接影響するのが、ライディングポジションと足つき性です。両車はシート高の数値こそ近いものの、実際の乗り味は異なります。
ボンネビルT120は、ハンドル位置が高く、ステップが前方に配置された、典型的なアップライトなポジションです。背筋を伸ばしてリラックスした姿勢で乗ることができるため、長時間のツーリングでも疲れにくいのが特長。視界も広く、街中での安全性にも貢献します。
一方のスピードツイン1200は、T120に比べてハンドルがわずかに低く、ステップ位置もやや後方に設定されています。これにより、自然な前傾姿勢となり、スポーツ走行時にバイクをコントロールしやすくなっています。とはいえ、スーパースポーツのような厳しい前傾ではないため、ツーリングも十分にこなせる快適性は確保されています。
足つき性については、ボンネビルT120のシート高が790mm、スピードツイン1200が805mmと、スピードツインの方がやや高め。しかし、スピードツインの方がシート前方が絞り込まれているため、スペック以上に足つきが良いと感じる方も多いようです。こればかりは体格による個人差が大きいので、ぜひ一度実際に跨ってみることをお勧めします。
⑤デザイン:伝統のT120とモダンなスピードツイン

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バイクは性能だけで選ぶものではありません。見た目の美しさや世界観も、所有する喜びを大きく左右します。ボンネビルT120とスピードツイン1200は、同じモダンクラシックのカテゴリーにありながら、そのデザインアプローチは大きく異なります。
ボンネビルT120は、まさに「正統派」。1959年の伝説的な初代ボンネビルのDNAを色濃く受け継いでいます。輝くメッキパーツ、クラシカルな2連メーター、ピーシューターと呼ばれる優雅なマフラー、そしてワイヤースポークホイール。細部に至るまで、時代を超えて愛される普遍的な美しさが追求されています。このトラディショナルな佇まいは、見る人の心を惹きつけてやみません。
対照的に、スピードツイン1200は、クラシックな要素に現代的なパフォーマンスと力強さを融合させた「モダンロードスター」です。バーエンドミラー、スポーティなアップタイプマフラー、ブラックアウトされたエンジンやホイールなど、より筋肉質でアグレッシブなスタイリングが特徴。伝統に敬意を払いつつも、現代のストリートに映えるモダンな感性で再構築されています。どちらのデザインを選ぶかは、あなたの美意識次第と言えるでしょう。

⑥価格と主要装備:約28万円の価格差の理由
最後に、現実的な選択をする上で避けては通れない価格と装備の話です。2024年現在のメーカー希望小売価格で比較すると、スピードツイン1200はボンネビルT120よりも約28万円高価に設定されています。
この価格差は、一体どこから来るのでしょうか?その答えは、これまで見てきた「走りの装備」の違いにあります。スピードツインに搭載されているマルゾッキ製の高性能倒立フォークや、Brembo製のハイエンドなブレーキキャリパーは、それだけで非常に高価なパーツです。つまり、約28万円の価格差は、主にスポーツ性能を高めるための投資と考えることができます。
しかし、ボンネビルT120が劣っているわけではありません。T120には、スピードツインにはないクルーズコントロールが標準装備されています。高速道路を使った長距離ツーリングが多いライダーにとっては、これは非常に価値のある装備です。また、メンテナンス性の面では、パンク修理が容易なスピードツインのチューブレスタイヤにメリットがあります。どちらの装備が自分の使い方にとってより価値があるか。この視点で比較検討することが、後悔しない選択に繋がります。
ボンネビルとスピードツインの違いを場面別に検証!あなた向きはどっち?

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基本的なキャラクターの違いが見えてきたところで、次はより具体的に、様々なライディング場面でどちらのバイクが輝くのかを検証していきましょう。あなたがバイクに乗って走る姿を想像しながら読み進めてみてください。きっと、あなたにぴったりの一台が、より鮮明に見えてくるはずです。
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街乗り(ストップ&ゴー)での扱いやすさ比較
通勤や買い物など、バイクが最も活躍する場面の一つが街乗りです。ここでは、どちらがより快適で扱いやすいのでしょうか。
結論から言うと甲乙つけがたいですが、総合的な扱いやすさでは、ややボンネビルT120に分があるかもしれません。その理由は、低回転域から豊かに湧き出るトルクにあります。信号からの発進や、混雑した道での低速走行など、アクセルを大きく開けられない状況でもギクシャクせず、ジェントルに車体を前に進めてくれます。リラックスしたライディングポジションも、頻繁な乗り降りや周囲の確認が求められる街中では大きなメリットとなるでしょう。
一方で、スピードツイン1200の軽さは街中でも大きな武器です。21kg軽い車体は、Uターンや狭い場所での取り回しを驚くほど楽にしてくれます。頻繁なストップ&ゴーでも、その軽さはライダーの負担を確実に軽減してくれるはずです。エンジンも低速で扱いにくいわけでは決してなく、非常にスムーズ。街乗りをスポーティに、キビキビと駆け抜けたいライダーにとっては、スピードツインが最高の相棒になる可能性も十分にあります。

ワインディングでの楽しさはどちらに軍配?
週末に郊外のワインディングロードへ…そんな楽しみを思い描いている方も多いでしょう。コーナリングの楽しさという点では、両者のキャラクターの違いが最も色濃く現れます。
ここはもう、はっきりとスピードツイン1200に軍配が上がります。軽量な車体、高性能な前後サスペンション、そして強力なBrembo製ブレーキ。これらがもたらすのは、狙ったラインを正確にトレースできる、まさに人馬一体のコーナリング体験です。次々と現れるコーナーをリズミカルにクリアしていく高揚感は、スピードツインならではの醍醐味。エンジンを高回転まで回した時のパワフルな加速も、ライダーのスポーツマインドを存分に満たしてくれるでしょう。
では、ボンネビルT120はワインディングが楽しくないのかと言うと、決してそんなことはありません。スピードツインのようにコーナーを攻め立てるのではなく、豊かなトルクを活かして、一つひとつのコーナーをゆったりと味わいながら駆け抜けるのがT120流の楽しみ方。心地よい鼓動を感じながら流れる景色に身を任せる時間は、何物にも代えがたい至福のひとときです。どちらの「楽しさ」を求めるかで、選択は自ずと決まってくるでしょう。
高速道路での快適性:クルーズコントロールの価値
ツーリングに出かければ、高速道路を長時間走る機会も多くなります。ここでの快適性は、旅の充実度を左右する重要なポイントです。
快適性という観点では、ボンネビルT120が優勢です。最大の武器は、なんといっても標準装備のクルーズコントロール。アクセル操作から解放されることで右手の疲労が劇的に軽減され、長距離移動が格段に楽になります。一度この便利さを知ってしまうと、もう手放せなくなるかもしれません。また、T120のどっしりとした安定感とリラックスしたポジションも、高速巡航での安心感と快適性に貢献します。
一方、スピードツイン1200にクルーズコントロールはありませんが、100PSを誇るパワフルなエンジンが高速道路で真価を発揮します。追い越し車線での加速は鋭く、流れをリードするような走りも余裕でこなします。やや前傾のポジションは、高速域での風圧を抑える効果も。退屈になりがちな高速道路での移動を、エキサイティングな時間に変えてくれる力を持っています。快適性のT120か、刺激のスピードツインか、ここでもキャラクターの違いが明確です。

ロングツーリングでの疲労度と積載能力
1泊2日、あるいはそれ以上のロングツーリングは、バイク乗りの大きな楽しみの一つ。疲労度の少なさや荷物の積載能力は、ロングツーリングの成否を分けると言っても過言ではありません。
疲労度の面では、やはりリラックスした乗車姿勢のボンネビルT120に分があります。ゆったりとしたポジションは体の自由度が高く、長時間乗っていても疲れが溜まりにくいでしょう。豊かな低速トルクも、頻繁なシフトチェンジを不要にし、ライダーの操作負荷を軽減してくれます。
積載能力については、どちらのモデルも純正や社外品で豊富なアクセサリーが用意されています。しかし、一般的にはリアキャリアやサイドバッグの選択肢が多く、クラシカルなスタイルにマッチさせやすいのはボンネビルT120と言えるでしょう。一方、スピードツイン1200も、シートバッグやタンクバッグなどを活用すれば、キャンプツーリングにも十分対応可能です。デザインを崩さないスタイリッシュな積載方法を工夫するのも、オーナーの楽しみの一つかもしれません。
知っておきたい、それぞれの「弱点」や注意点
どんなに素晴らしいバイクにも、必ず長所と短所があります。購入後に「こんなはずじゃなかった」と後悔しないために、それぞれのモデルが持つ「弱点」や注意点についても正直にお伝えしておきましょう。
まず、ボンネビルT120の注意点は、チューブタイヤであること。クラシカルな雰囲気を高めるスポークホイールの代償として、万が一のパンク時には修理に手間がかかる可能性があります。また、その穏やかなキャラクターゆえに、刺激的な走りを求めるライダーには物足りなく感じるかもしれません。
一方、スピードツイン1200は、そのスポーティさが時に裏目に出ることも。硬めにセッティングされた足回りは、荒れた路面では乗り心地が悪いと感じる可能性があります。また、T120のような伝統的な乗り味を期待して乗ると、「思っていたよりモダンすぎる」と感じるかもしれません。どちらの弱点が自分にとって許容範囲内か、冷静に判断することが大切です。

【結論】あなたへのおすすめはボンネビル?スピードツイン?

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さて、様々な角度から2台を比較してきましたが、いよいよ結論です。結局のところ、あなたはどちらを選ぶべきなのでしょうか?
もしあなたが、バイクの力強い鼓動を感じながら、景色や流れる時間をゆったりと味わうツーリングを好むなら。そして、時代に流されない普遍的な美しさを愛するなら。選ぶべきはボンネビルT120で間違いありません。あなたのバイクライフを、穏やかで豊かなものにしてくれる最高のパートナーとなるでしょう。
もしあなたが、クラシックなスタイルは好きだけれど、走りには妥協したくない。ワインディングを軽快に駆け抜ける高揚感を求め、バイクに刺激とパフォーマンスを期待するなら。選ぶべきはスピードツイン1200です。そのモダンな走りは、あなたの日常をエキサイティングに変えてくれるはずです。
優劣ではありません。どちらのバイクが、あなたの描く「理想のバイクライフ」という物語の主役にふさわしいか。それが、唯一の答えなのです。
総括:ボンネビルとスピードツインの違いはライフスタイルの違いそのもの
ボンネビルT120とスピードツイン1200、2台の魅力的なバイクを比較検討してきました。それぞれの違いが、より深くご理解いただけたかと思います。

- ボンネビルとスピードツインは同じ1200ccエンジンだが性格は対照的
- ボンネビルは低回転域のトルクと鼓動感を重視した「高トルク型」チューン
- スピードツインは高回転域のパワーと伸びを重視した「高出力型」チューン
- 最高出力はボンネビルが80PS、スピードツインが100PSで20PSの差
- ボンネビルの足回りは、乗り心地の良さを重視した快適セッティング
- スピードツインは倒立フォークやBrembo製ブレーキなどスポーツ志向の足回り
- 車両重量はスピードツインの方がボンネビルより21kg軽い
- 車重の軽さは、取り回しの容易さやコーナリングの軽快さに直結する
- ボンネビルのポジションは背筋が伸びるリラックスしたアップライトな姿勢
- スピードツインのポジションは、やや前傾のスポーティなもの
- デザインはボンネビルが伝統的なクラシックスタイルを継承
- 対してスピードツインは、モダンで筋肉質なロードスタースタイル
- ボンネビルはチューブタイヤ仕様のクラシカルなスポークホイールを採用
- スピードツインはメンテナンス性に優れるチューブレス仕様のキャストホイール
- ボンネビルには高速巡航に便利なクルーズコントロールが標準装備される
- スピードツインには、よりスポーティな走りを楽しめる「スポーツ」モードがある
- 約28万円の価格差は、主に高性能な足回りやブレーキなどの装備に起因する
- ワインディングでの運動性能は、軽くて高性能な足回りを持つスピードツインが優位
- どちらが優れているかではなく、自身のライフスタイルに合うかが選択の鍵
最後に
今回は、トライアンフの人気モデル、ボンネビルT120とスピードツイン1200の違いについて、多角的に解説しました。
単なるスペックの優劣ではなく、両者が持つ世界観やキャラクターの違い、そして、それがご自身のライフスタイルとどう共鳴するかが、バイク選びにおいていかに重要か、ご理解いただけたのではないでしょうか。
最高の相棒を手に入れたら、どこへ走りに行きますか?当ブログでは、関東近郊のおすすめツーリングスポットも紹介していますので、ぜひ旅の計画の参考にしてみてください。
また、今回のように久しぶりにバイク選びをされるリターンライダーの方や、購入後の維持費が気になる方には、以下の関連記事もきっとお役に立てるはずです。