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ヤマハXSR900は、その圧倒的なパワーから「速すぎる」という評価を持つバイクとして知られています。888ccの水冷並列3気筒エンジンから繰り出される120PSという最高出力は、確かにネオクラシックカテゴリーでもトップクラスのパワーを誇ります。
しかし、実際にXSR900を深く知れば知るほど、この「速すぎる」という評価が一面的であることが分かってきます。最新の電子制御システムによって、そのパワフルな性能は驚くほど扱いやすいものとなっているのです。
この記事を読むと分かること
- 4段階のパワーモードによる、状況に応じた出力コントロール
- 最新の電子制御システムによる、高い安全性と扱いやすさ
- 街乗りから高速走行まで、幅広い用途での使用感
- 同クラスの競合モデルと比較した、XSR900の特徴と優位性
初期型から2022年のフルモデルチェンジを経て、XSR900は単なるパワフルなバイクから、電子制御による高い安全性と扱いやすさを備えた、バランスの取れたマシンへと進化を遂げています。
XSR900は速すぎて扱いが難しい?パワーと走行性能を徹底検証

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XSR900の実力と性能を、パワー面と安全面から詳しく検証していきます。
- エンジンスペックと実力の全貌
- パワーモードによる性能の違い
- 電子制御による安全性の確保
- トラクションコントロールの効果
- 高速走行時の安定性
- 街乗りでの扱いやすさ
- リミッターカット・フルパワー化のリスク
エンジンスペックと実力の全貌
XSR900は水冷4ストローク並列3気筒エンジンを搭載し、排気量888cc、最高出力120PS/10000rpm、最大トルク93N・m/7000rpmという圧倒的なパワーを誇ります。同クラスのネオクラシックバイクと比較しても、その性能は際立っています。
特筆すべきは、その並列3気筒エンジンが生み出す独特の加速フィーリング。低回転域から力強いトルクを発揮し、回転を上げるにつれてスムーズに伸びていく特性は、スポーツライディングを楽しむライダーを魅了します。
実際の走行では、5000回転までは一般的な大型バイクと同様の加速感ですが、それを超えると一気にキャラクターが変化。中回転域からの加速は、まさにスポーツバイク顔負けの爽快感を味わえます。ただし、この強烈なパワーは適切なコントロールが必要とされます。

パワーモードによる性能の違い
XSR900には4段階のパワーモードが搭載されており、ライダーのスキルや走行シーンに合わせて最適な出力特性を選択できます。モード1が最もアグレッシブで、順にマイルドになっていきます。
パワーモード1では、エンジンの能力をフルに引き出し、ダイレクトなレスポンスを実現。スポーツライディングやワインディング走行で真価を発揮します。一方、モード2や3は街乗りに適しており、より穏やかな出力特性となります。
特に注目すべきは、各モードでのトルク特性の違い。モード4では、まるで400ccクラスのような扱いやすさを実現し、雨天時や市街地走行での安心感を提供します。これにより、ライダーは状況に応じた最適な走りを選択できるのです。

電子制御による安全性の確保
XSR900は、最新の電子制御システムを搭載し、高度な6軸IMU(慣性計測ユニット)によって、あらゆる走行状況での安全性を確保しています。このシステムは、バイクの挙動をリアルタイムで検知し、必要に応じて制御を行います。
特に注目すべきは、電子制御システムが持つ予測制御の能力です。コーナリング中のスリップや急加速時のウイリー、急ブレーキ時の車体の挙動まで、システムが常に監視し、ライダーの意図に反した動きを未然に防ぎます。
また、ライディングモードと連動したブレーキコントロールシステムも搭載。コーナリングABSやバックスリップレギュレーターにより、スポーティな走りでも高い安全性を実現しています。この電子制御の恩恵は、特に雨天時や路面状況が悪い場合に顕著に表れます。

トラクションコントロールの効果
XSR900のトラクションコントロールは、3段階の介入レベルに加えてOFF設定も可能で、ライダーの好みや路面状況に応じた最適な設定を選択できます。レベル1は最小限の介入で、スポーティな走りを楽しむライダー向け。レベル3は最も強い介入で、雨天時や初心者に適しています。
トラクションコントロールの作動は非常に滑らか。急なアクセルワークでも、システムが後輪の空転を検知すると、エンジン出力を自然に制御し、ライダーに違和感を感じさせないスムーズな介入を実現します。
さらに、スライドコントロール機能も搭載されており、コーナリング中の横滑りまでも制御。これにより、経験の浅いライダーでも安心してスポーティな走りを楽しむことができます。ただし、これらの機能に過度に依存せず、基本的な運転技術の向上も大切です。

高速走行時の安定性
XSR900は、そのパワフルな性能に加えて、高速道路での走行安定性も優れています。特にロングホイールベース(1,495mm)と適度なキャスター角(25度)の組み合わせにより、高速巡航時の直進安定性は抜群です。
高速での巡航性能を支えているのが、クルーズコントロールシステム。長距離ツーリングでの疲労を軽減し、一定速度での快適な走行を実現します。また、クイックシフターの採用により、高速域でのシフトチェンジもスムーズに行えます。
ただし、ネイキッドバイクならではの課題として、防風効果の面では制限があります。120km/h以上の高速走行では風圧の影響を強く受けるため、オプションのスクリーンの装着を検討することをお勧めします。これにより、さらに快適な高速走行が可能になります。

街乗りでの扱いやすさ
「速すぎる」という評価があるXSR900ですが、実は街乗りでの扱いやすさも兼ね備えています。193kgという軽量な車体と、低回転域での扱いやすいエンジン特性により、街中での取り回しも苦になりません。
特筆すべきは、3気筒エンジンの特性を活かした低速域でのトルク感。2,000回転程度の低回転域でも十分なトルクがあり、街中での頻繁な発進・停止でもストレスを感じません。また、クラッチの操作感も軽く、渋滞時の低速走行でも疲労が少ないのが特徴です。
さらに、シート高810mmは決して低くはありませんが、シート形状の工夫により、実際の足つき性は良好です。ステップ位置も自然で、街中での信号待ちなども快適。パワーモードを2や3に設定すれば、穏やかな出力特性となり、街乗りでも安心して運転できます。

リミッターカット・フルパワー化のリスク
XSR900の速さについて語る際に避けて通れないのが、リミッターカットやフルパワー化の話題です。標準状態でも120PSという十分なパワーを持つXSR900ですが、一部のライダーはさらなるパワーアップを求めてこれらの改造を検討します。
しかし、電子制御システムへの改造は、安全面で大きなリスクを伴います。特にリミッターカットは、エンジンの寿命を縮めるだけでなく、保証の失効や車検への影響も考えられます。また、公道での使用は法律違反となる可能性が高く、事故時の補償にも影響を及ぼす可能性があります。
フルパワー化については、適切な手順で行えば馬力を5-10%程度向上させることは可能です。ただし、それによってバイクの特性が大きく変化し、電子制御システムとの相性問題が発生する可能性もあります。純正状態での十分な性能を考えると、これらの改造の必要性は極めて低いと言えます。

XSR900は速すぎるのか?購入の決め手と長期使用レポート

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実際のオーナーの評価と、長期使用での実用性について解説します。
- 維持費と燃費の実態
- ツーリングでの実力と航続距離
- カスタマイズによる個性の表現
- オーナーの満足度と後悔ポイント
- 同クラスバイクとの比較検討
- デザインの評価と将来性
- 総括:XSR900は速すぎない、懐の深いパワーバイク
維持費と燃費の実態
XSR900の維持費について、燃費は通常走行で約20.4km/L、スポーツ走行でも18km/L前後を記録します。14Lの燃料タンク容量と組み合わせると、一回の満タンで約280kmの航続距離が期待できます。
定期メンテナンスについては、水冷3気筒エンジンの特性上、オイル交換は5,000km毎が推奨されます。タイヤの寿命は走行スタイルにもよりますが、純正の高性能タイヤで約8,000kmが目安となります。ブレーキパッドは約20,000kmでの交換が一般的です。
保険料は、任意保険の等級にもよりますが、年間3-5万円程度。車検費用は約10万円前後で、2年に1度必要となります。これらを総合すると、年間の維持費は走行距離にもよりますが、20-30万円程度を見込んでおくと良いでしょう。

ツーリングでの実力と航続距離
XSR900のツーリング性能で最も注目すべきは、快適な巡航性能と疲れにくい車体バランスです。特に中回転域(4000-6000rpm)での余裕あるパワーは、ロングツーリングでの大きな武器となります。
しかし、気になるのが航続距離です。14Lのタンク容量は同クラスと比べてやや少なめで、高速道路では満タンから約250km程度が給油の目安となります。これは週末ツーリングでは十分ですが、長距離ツーリングでは給油計画を慎重に立てる必要があります。

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荷物積載については、オプションのサイドバッグマウントを使用することで、ツーリングに必要な装備の搭載が可能です。ただし、テールランプ周りの独特なデザインにより、汎用のシートバッグを使用する際は干渉に注意が必要です。

カスタマイズによる個性の表現
XSR900は豊富なカスタマイズオプションを用意しており、ライダーの好みに合わせた個性的なマシンづくりが可能です。特に人気が高いのは、スクリーンやマフラー、ハンドルなどの実用的なカスタマイズです。
純正オプションでは、クイックシフター、グリップヒーター、サイドバッグなど、実用的なアイテムが充実。さらに、サードパーティ製のパーツも豊富に揃っており、デザイン面でもカスタマイズの幅が広がります。
ただし、電子制御が充実している分、電装系のカスタマイズには注意が必要です。純正部品との相性や、各種センサーへの影響を考慮しながら、計画的なカスタマイズを進めることをお勧めします。

オーナーの満足度と後悔ポイント
実際のオーナーの声を分析すると、XSR900の満足度は非常に高く、特にエンジンの性能と扱いやすさのバランスが高評価を得ています。多くのオーナーが「速すぎる」という先入観から、購入を躊躇していたものの、実際の使用では電子制御のサポートにより安心して乗れると報告しています。
一方で、後悔ポイントとして最も多く挙げられるのが航続距離の短さです。タンク容量14Lは、ツーリング時に給油計画の制約となりがちです。また、シートの硬さを指摘する声もあり、長距離走行時には休憩を多めに取る必要性を感じるオーナーも少なくありません。
しかし、これらの短所も、カスタマイズやライディングプランの工夫で十分にカバーできるレベルとの評価が大多数です。特に、経験を積むにつれてバイクの特性に慣れ、より深い愛着を感じるようになるという声が目立ちます。

同クラスバイクとの比較検討
XSR900の最大の特徴は、クラシカルなデザインに最新の電子制御を組み合わせた点です。同クラスのZ900RSと比較すると、XSR900は車重が約20kg軽く、より俊敏な走りが可能です。また、電子制御の充実度でもアドバンテージがあります。
価格面では、120万円台前半というポジションは、同クラスの競合モデルと比較して非常に競争力があります。特に標準装備の充実度を考慮すると、コストパフォーマンスは高いと言えるでしょう。
ただし、排気音の個性や乗車ポジションなど、好みが分かれる部分もあります。Z900RSがよりクラシカルな乗り味を提供するのに対し、XSR900はよりスポーティな特性を持っています。選択の際は、試乗での体感を強くお勧めします。

デザインの評価と将来性
XSR900のデザインは、クラシカルな要素とモダンな要素を高次元で融合させています。特に2022年のフルモデルチェンジで採用された新デザインは、80年代のレーシングマシンからインスピレーションを得ながら、現代的な解釈を加えた意欲的なものとなっています。
注目すべきは、デザイン性と機能性の両立です。小ぶりなLEDヘッドライト、スリムなフューエルタンク、テール周りのミニマルなデザインなど、各パーツが美しさと実用性を兼ね備えています。
将来性という観点では、このデザインアプローチは長く色褪せない価値を持つと評価されています。また、豊富なカスタマイズパーツの存在により、時代とともに進化させていける点も、長期保有を考えるライダーにとって魅力となっています。

総括:XSR900は速すぎない、懐の深いパワーバイク
XSR900は、「速すぎる」という評価を受けながらも、実は非常にバランスの取れたバイクです。豊富な電子制御により、そのパワフルな性能を安全に扱うことができ、街乗りから高速巡航、スポーツライディングまで、幅広い用途に対応できます。
このバイクが特に適しているのは、スポーツライディングの楽しさを知りながらも、日常での扱いやすさを求めるライダーです。中型バイクからのステップアップを考えているライダーにとっても、電子制御のサポートにより、無理なく馴染める一台と言えるでしょう。
ただし、純粋なツアラーとしての使用を主目的とする場合は、タンク容量の制約を考慮する必要があります。また、クラシックバイクとしての味わいを重視するライダーには、より伝統的なアプローチを取る他モデルも選択肢となるでしょう。


- XSR900は888cc・120PSの高出力エンジンを搭載するが、電子制御で扱いやすい
- 4段階のパワーモードにより、状況に応じた出力特性を選択可能
- 6軸IMUとトラクションコントロールで高い安全性を確保
- クイックシフターとクルーズコントロールで快適な高速巡航を実現
- 193kgの軽量な車体で、街乗りでの取り回しも良好
- 3気筒エンジンは低回転からトルクがあり、街中での扱いやすさも確保
- リミッターカットやフルパワー化は安全面でリスクが高く非推奨
- 燃費は約20.4km/L、航続距離は満タンで約280km
- 5,000km毎のオイル交換など、メンテナンス性は良好
- タンク容量14Lは同クラスと比べてやや少なめ
- 豊富なカスタマイズオプションで個性的なマシン作りが可能
- 電子制御の充実度は同クラス中でもトップレベル
- 価格は120万円台前半でコストパフォーマンスに優れる
- 80年代レーシングマシンを意識したデザインで将来性も高い
- 中型バイクからのステップアップに適したバイク
最後に
今回は、XSR900の「速すぎる」という評価について、実際の性能と使用感から検証してきました。120PSという強力なパワーを持ちながら、最新の電子制御システムによって、驚くほど扱いやすいバイクであることが分かりました。
バイク選びで悩んでいる方には、ヤマハの他のネオクラシックモデルもおすすめです。より扱いやすい特性を持つXSR700や、クラシカルな魅力を持つSR400など、様々な選択肢があります。