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スズキの「バンバン200」に対し、一部で「ダサい」という評価が聞かれることがあります。この記事では、バンバン200の評価について深く掘り下げます。
バンバン200がなぜ人気なのか、その独特な魅力と併せて、なぜ「遅い」と言われるのか、その性能面での弱点にも触れていきます。また、ライバルとされたヤマハ TWとの比較や、FTRとの比較を交え、当時の背景を探ります。特徴的なシートの評価や、生産終了の理由についても考察します。さらに、バンバン200の真価ともいえるカスタムの世界や、中古市場での価格動向、気になる燃費まで、多角的にその実像に迫ります。
この記事を読むと分かること
- バンバン200が「ダサい」と言われる主な3つの理由
- 性能面(特に「遅い」とされる点)の具体的な評価
- ライバル(TW・FTR)との比較と当時の市場背景
- 「ダサい」という評価が誤解である可能性と、再評価される魅力
バンバン200がダサいという評価は本当なのか、それとも独自のスタイルが誤解されているだけなのか、この記事でその答えが見つかるはずです。
なぜバンバン200はダサいと評価されるのか?3つの理由

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スズキ バンバン200は、その唯一無二のデザインで根強いファンを持つ一方で、「ダサい」という厳しい評価を受けることもあります。この評価は、主に3つの側面に起因していると考えられます。そのユニークな外見、競合ひしめく市場での立ち位置、そして絶対的な性能が、特定の価値観から見るとネガティブに映ってしまったのです。
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理由①:アンバランス?極太ファットタイヤの評価
バンバン200のデザインを語る上で絶対に外せない要素が、その足回り、特にリアに装着された180/80-14という極太のファットタイヤです。このバルーンタイヤこそがバンバン200のアイデンティティであり、同時に「ダサい」と評される最大の理由となっています。
このデザインは、1970年代に人気を博したレジャーバイク、初代バンバンシリーズ(RV90など)への明確なオマージュです。当時のモデルも砂地や荒れ地での走破性を意図した極太タイヤを特徴としており、バンバン200はそのレトロな雰囲気を現代に蘇らせました。その結果、200ccクラスとは思えないほどの迫力と、他のどのバイクにも似ていない強烈な個性を手に入れたのです。
しかし、この個性が特定の層からは「アンバランス」と受け取られました。
「ダサい」と評される2つの視点
1. 視覚的なアンバランス感
スリムな燃料タンクとシンプルなフレームに対し、リアタイヤだけが極端に太い。このアンバランスさが「ちぐはぐ」「デザイン的に破綻している」と見なされることがあります。特にバイクの機能美を重視する層からは、バランスを欠いたスタイルとして敬遠される傾向が見られました。
2. 性能と見た目の乖離(かいり)
このタイヤのルーツは砂地走破性(サンドバイク)にありますが、バンバン200のエンジンパワー(後述)では、その見た目から連想されるような本格的なオフロード走行は困難です。このギャップが、「見かけ倒し」「コケオドシ的」といったネガティブな評価につながりました。
技術的な側面からも、このタイヤは評価が分かれます。ファットなバイアスタイヤは重量があり、路面抵抗も大きくなります。これが、バンバン200の加速性能や最高速度に直接的なマイナス影響を与えていることは否めません。
走行フィーリングも独特です。オーナーレビューなどによれば、直進安定性は非常に高いものの、コーナリング時にはその広い接地面が抵抗となり、一般的なバイクのような軽快な倒し込みは期待できません。「曲がりにくい」「意識的にハンドルで曲げる感覚」と表現されることもあり、この独特の操縦性が「スポーティではない=ダサい」という評価に結びつくこともありました。
このように、バンバン200のアイコンであるファットタイヤは、その強烈な個性の代償として、デザインのバランス、性能とのギャップ、そして独特のハンドリングという点で、否定的な評価を受ける側面を併せ持っていたのです。
理由②:「遅い」は本当?非力なエンジン性能
バンバン200が「ダサい」と言われる第二の理由は、より直接的な性能面、すなわち「遅い」と評されるそのパワーユニットにあります。
バンバン200に搭載されているのは、199ccの空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒エンジンです。このエンジン形式は、構造がシンプルで信頼性が高く、低回転域での「トコトコ」とした鼓動感(味わい)を生み出す一方で、高回転域でのパワーを稼ぐのには不向きです。
2007年にフューエルインジェクション(FI)化されたモデルの最高出力は、わずか16PS/8,000rpm。最大トルクも1.5kgf·m/6,500rpmに留まります。これは、当時のライバル(後述)と比較しても低い数値であり、現代の250ccクラス(例えば同じスズキのジクサー250は26PS)と比較すれば、その非力さは明らかです。
この「遅さ」は、オーナーレビューでも共通の認識となっています。
具体的な走行シーンでのパワー不足
- 街乗り:発進加速は必要十分で、市街地の交通の流れをリードすることは可能ですが、力強いダッシュ力はありません。
- 登坂路や二人乗り:明確なパワー不足を感じるシーンです。速度の維持が難しく、エンジンが苦しそうに唸る場面も見られます。
- 高速道路:最も苦手とするステージです。時速80kmを超えるとエンジンの振動が著しく大きくなり、多くのレビューで「手が痺れる」「エンジンが可哀そう」と報告されています。時速100kmでの巡航は可能ですが、追い越し車線に出るような余力は全くなく、「左車線キープが基本」となります。
この絶対的なパワー不足が、理由①のファットタイヤの見た目と組み合わさることで、「あんなにゴツいタイヤを履いているのに、全く走らない」という、致命的な「ダサい」イメージを決定づけてしまったのです。
性能至上主義や、高速道路を使った長距離ツーリングを快適にこなしたいライダーにとって、バンバン200の性能は期待外れであり、その非力さが「使えないバイク」「ダサいバイク」というレッテルを貼られる大きな要因となりました。
理由③:TWブームの影で「二番煎じ」との比較

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バンバン200の評価を理解する上で、その登場した「時代背景」は非常に重要です。バンバン200が市場に投入された2002年は、日本のバイク史に残る一大ムーブメント、ストリートトラッカーブームの絶頂期でした。
このブームの絶対的な中心にいたのが、ヤマハの「TW200(後にTW225)」です。
TWは元々、1987年に発売されたアドベンチャーバイクでしたが、その極太タイヤがカスタムビルダーの目に留まり、ストリート仕様に改造されるようになりました。特に、エアクリーナーボックスなどを取り外してフレームやエンジンを剥き出しにする「スカチューン」と呼ばれるカスタムスタイルが爆発的な人気を博します。
【専門用語解説】スカチューン
「スカスカ・チューン」の略。主にTWやFTR、バンバン、グラストラッカーなどの単気筒バイクで行われたカスタム手法。エアクリーナーボックスやバッテリーケースなどを取り外し、シート下のスペースを「スカスカ」にすることで、車体を軽快に見せるスタイル。性能向上よりも見た目のインパクトを重視したものでした。
この人気を決定的な社会現象に押し上げたのが、2000年に放送されたテレビドラマ『Beautiful Life』です。主演の木村拓哉氏が劇中でカスタムされたTWに乗ったことで、TWはファッションアイテムとして認知され、納車まで数ヶ月待ちという異常な人気となったのです。
この巨大な市場に対し、ホンダは2000年に本格的なレースの血統を持つ「FTR223」を投入し大ヒット。そしてスズキも、グラストラッカーに続き、1970年代の自社ヘリテージを復活させる形で2002年に「バンバン200」を投入しました。
トレンド追随者のジレンマ
市場の認識において、TWは「ブームのオリジナル」、FTRは「高性能な本格派」という確固たる地位を築いていました。一方、バンバン200は、ファットタイヤという共通項こそあれ、性能でもTWやFTRに及ばず、デザインもレトロで柔和な路線でした。
その結果、カルチャー(流行)において最も重要視される「真正性(オリジナルであること)」を持たない「TWの二番煎じ」「ブームに便乗したモデル」と見なされる側面がありました。性能もスタイルも中途半端、という印象が、当時のトレンドに敏感な層から「ダサい」と見なされる最大の要因となったのです。
独特な「モコモコ」シートの賛否両論

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バンバン200の「ダサい」という評価において、ファットタイヤと並んで槍玉に挙げられるのが、その独特なシート形状です。「モコモコ」あるいは「フカフカ」と表現される、長く、幅広で、非常にクッション性の高いシートも、賛否両論を巻き起こしました。
このシートは、デザイン性よりも実用性と快適性を最優先した設計の表れです。
【賛】圧倒的な快適性と実用性(メリット)
- 卓越した乗り心地:オーナーレビューでは、「ソファのよう」「長距離でもお尻が全く痛くならない」と、そのクッション性の高さが絶賛されています。
- 快適な二人乗り性能:広くフラットな座面はタンデム(二人乗り)にも最適です。標準装備された大型グラブバーと相まって、200ccクラスのバイクとしては異例なほど快適な二人乗りが可能です。
- 良好な足つき性:シート高は770mmと低く抑えられています。シート幅があるため数値以上に広く感じるものの、車重の軽さ(装備重量128kg)も相まって、身長170cm前後あれば両足がべったりと着くほどの安心感があります。
この実用性の高さは、初心者や小柄なライダー、リターンライダーから絶大な支持を受けました。
一方で、この「快適性全振り」のデザインが、当時のトレンドとは真っ向から対立しました。
【否】デザイン的な野暮ったさ(デメリット)
- シャープさの欠如:当時流行していたスカチューンでは、薄く短いシート(タックロールシートなど)が「カッコいい」とされていました。バンバン200の厚くボリュームのあるシートは、その対極にある「野暮ったい」デザインと見なされました。
- 「学生向け」のイメージ:その威圧感のない親しみやすいデザインと実用性の高さが、一部では「学生向けのバイク」「初心者っぽい」というイメージに繋がり、スポーティさやワイルドさを求める層からは敬遠される要因となりました。
このように、バンバン200のシートは、快適性を取るか、デザイン(シャープさ)を取るか、というトレードオフをユーザーに突きつける要素であり、後者を重視する層から「ダサい」と評される一因となったのです。
ライバル(TW・FTR)と比較した弱点とは
2000年代初頭のトラッカーブームにおいて、バンバン200が「ダサい」という評価から逃れられなかった背景には、直接的なライバルであったヤマハ TW225とホンダ FTR223との明確な「スペック差」と「キャラクターの違い」があります。
当時の市場で、これら3車種は常に比較対象とされていました。それぞれのスペック(同時期の代表的なモデル)を比較すると、バンバン200の置かれた立場が明確になります。
| 項目 | スズキ バンバン200 (FI) | ヤマハ TW225 | ホンダ FTR223 |
|---|---|---|---|
| 排気量 | 199cc | 223cc | 223cc |
| 最高出力 | 16PS/8,000rpm | 18PS/7,500rpm | 19PS/7,000rpm |
| 最大トルク | 1.5kgf·m/6,500rpm | 1.8kgf·m/6,500rpm | 2.0kgf·m/6,500rpm |
| 車両重量(乾燥) | 128kg(装備) | 120kg | 119kg |
| シート高 | 770mm | 790mm | 780mm |
| 発売年 | 2002年 | 2002年 | 2000年 |
| 生産終了 | 2017年 | 2007年 | 2017年 |
この比較表から明らかなように、バンバン200はすべての性能面でライバルに劣っていました。
具体的な性能差
- パワー:TW225より2PS、FTR223より3PS低い。この差は加速や登坂、高速走行で顕著に現れます。
- トルク:特にFTR223との差(約25%)は大きく、街乗りでの実用性に直結します。
- 車重:装備重量128kgは、TW225やFTRの乾燥重量と比較すると、実質的に10kg以上重い可能性があります。
性能以外の側面でも、バンバン200は不利な立場にありました。
TWは木村拓哉氏主演のドラマ効果で「カルチャーアイコン」としての地位を確立。FTRはホンダの伝統的なフラットトラックレーサーの血統という「本格派のストーリー」を持っていました。一方、バンバン200は70年代の自社モデルへのオマージュという意図はあったものの、それが一般のバイクファンに広く認知されることはなく、「後発で、性能も低く、中途半端」という評価を受けてしまったのです。
こうしたライバルとの比較が、バンバン200を「ダサい」と評する声をさらに増幅させる結果となりました。
バンバン200の生産終了理由は人気低迷か
2017年に生産を終えたバンバン200。その終焉は「ダサい」という評価による人気低迷が原因だったのでしょうか。
実は、その答えは「否」です。生産終了の直接的な理由は、平成28年(2016年)排出ガス規制への対応を断念したことにあります。
この規制は、国内の二輪車メーカーすべてに影響を与えた厳しいものでした。規制に適合させるためには、エンジンや排気系統の大幅な改良、場合によっては燃料噴射システムの刷新が必要となり、莫大な開発コストが発生します。
生産終了を選択した背景
- ニッチ市場:バンバン200は大ヒット作ではなく、安定した販売台数を維持する「趣味性の高いバイク」でした。開発コストの回収が困難と判断されました。
- ブームの終焉:2000年代初頭のストリートトラッカーブームはすでに過ぎ去り、市場全体が縮小していました。
- 経営判断:スズキは限られた開発リソースを、より販売台数が見込める車種(ジクサー250など)に集中させる戦略を選びました。
重要なのは、生産終了は「売れなかったから」ではなく、「規制対応のコストに見合う販売が見込めなかったから」という点です。実際、バンバン200は生産終了直前まで一定の需要を保ち続けていました。
ライバルのTW225は2007年に、FTR223も同じく2017年に生産を終えています。つまり、バンバン200だけが「ダサい」ゆえに消えたのではなく、このジャンル全体が時代の流れと規制の波に飲まれた、というのが正確な見方です。
むしろ、生産終了から8年が経過した現在でも中古市場で安定した人気を保っている事実こそが、バンバン200が決して「ダサいだけのバイク」ではなかったことの証明と言えるでしょう。
バンバン200はダサいのか?誤解される3つの魅力

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「ダサい」という評価の裏には、実は深い誤解が潜んでいます。バンバン200の真の価値は、表面的なスペックや流行だけでは測れない部分にあるのです。ここからは、そのユニークな魅力を掘り下げていきます。
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「遅い」は哲学?スローライフの本質
バンバン200の「遅さ」を欠点と捉えるのは、ある意味で正しく、ある意味で大きな誤解です。確かに最高速を競うバイクではありません。しかし、それはバンバン200が目指した世界観そのものだったのです。
開発コンセプトである「1970年代のレジャーバイクの再現」は、単なるレトロデザインの採用ではありませんでした。それは、スピードや性能を競い合うことから一歩離れ、「トコトコ」と景色を楽しみながら走るという、バイク本来の楽しみ方への回帰を意味していたのです。
スローライフの実践
- 競争からの解放:高速道路で速度を競う必要がない。自分のペースで、風景を楽しみながら走れる余裕。
- 五感で味わう走り:エンジンの鼓動、風の音、タイヤと路面の対話。すべてが「ゆっくり」だからこそ感じられる豊かさ。
- 到着が目的ではない:目的地までの道のりそのものが、バンバン200では冒険になる。
- カスタムの容易さ:構造が単純であるため、DIY(自分で作業すること)でのカスタムにも適しています。
ノーマル状態では「モコモコしてダサい」と評されたあの分厚いシートや、野暮ったい大型フェンダーこそ、カスタムビルダーにとっては「真っ先に取り払うべき格好の素材」となります。シートを薄いタックロールシートに変え、フェンダーレス化し、マフラーを交換する。それだけで、バンバン200の印象は劇的に変わります。
バンバン200を「70点スタート」の素材と捉え、残りの30点をオーナーが仕上げることでバイクとの結びつきを深める、という考え方もあります。
「ダサい」と感じる部分は、オーナーの手によって「カッコよく」変貌させるための「伸びしろ」なのです。ノーマル状態で評価を終えてしまうのは、バンバン200というバイクの楽しみ方を半分以上見逃していると言っても過言ではありません。
カスタムベースとしての隠れた真価

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前述の通り、バンバン200の真価は「白紙のキャンバス」としての素質にあります。ノーマル状態では「ダサい」と評されることすらある外観が、カスタムの世界では逆に大きな武器となるのです。
カスタムベースとして優れている理由は、技術的な側面にあります。
カスタムベースとしての優位性
- シンプルな構造:空冷単気筒エンジン、キャブレター(初期型)またはシンプルなFI、ドラムリアブレーキなど、機械的にシンプルです。これにより、カスタムの自由度が高く、トラブルシューティングも容易です。
- 安価なベース車両:中古市場では比較的手頃な価格で入手可能であり、「失敗を恐れずチャレンジできる」という心理的ハードルの低さがあります。
- 豊富なパーツ供給:TW225やFTR223と一部のパーツが共通、または流用可能であり、カスタムパーツの選択肢が広がります。
- カスタムの容易さ:構造が単純であるため、DIYでのカスタムにも適しています。
このように、バンバン200の持つ「白紙のキャンバス」としての素質は、カスタムの世界では大きな武器となっているのです。
燃費と足つきは優秀?実用面のメリット
デザインの個性や「遅さ」といった哲学的な議論が先行しがちなバンバン200ですが、日常の移動手段、いわゆる「下駄」としての実用性が非常に高い点も、見逃せない大きな魅力です。この実用性の高さが、結果として「長く付き合える良いバイク」という再評価に繋がっています。
1. 圧倒的な足つき性の良さ
バンバン200のシート高は770mmと、200ccクラスのバイクとしては異例なほど低く設定されています。
さらに、シート自体は幅広ですが、エンジンがスリムな単気筒であるため、車体のまたがり部分(ニーグリップ部分)は細く、足を真下に下ろしやすくなっています。その結果、身長170cm前後のライダーであれば両足がべったりと地面に着くほどの、抜群の足つき性を誇ります。
車両重量も装備で128kgと軽量なため、小柄な方や女性、バイクの運転にブランクがあるリターンライダー、初めて中型免許(現・普通二輪免許)を取得した初心者まで、ライダーの体格や技量を問わず、絶大な安心感を提供します。信号待ちの多い市街地走行や、狭い場所での取り回しにおいて、このメリットは計り知れません。
2. 良好な燃費性能と維持費の安さ
非力なエンジンは、裏を返せば「経済性に優れる」ことを意味します。バンバン200の燃費性能は、オーナーのレビューによれば、市街地走行やツーリングなど、乗り方によって変動はあるものの、実燃費でリッターあたり30km〜40km程度を記録することが多いようです。これは非常に良好な数値と言えます。
ただし、大きな欠点として燃料タンク容量が小さい点が挙げられます。仮にリッター35km走るとしても、満タンからの航続距離は200km前後。長距離ツーリングでは頻繁な給油が必要となります。この小さなタンクも「ダサい(実用性がない)」と言われる一因ですが、デザインとのトレードオフでした。
とはいえ、200cc(正確には199cc)という排気量は、車検が不要であり、税金や保険料といった維持費も250ccクラスより安価です。街乗りや通勤・通学をメインに考えれば、その経済性は大きなメリットとなります。
このように、見た目の個性だけでなく、日常使いでの圧倒的な扱いやすさと経済性を両立している点が、バンバン200が「ダサい」という評価を超えて長く愛され続ける、確かな理由の一つなのです。
なぜ人気?生産終了後の中古市場での価格
2017年に排出ガス規制の影響で生産終了となったバンバン200。ブームの追随者として登場したモデルが、ブームの終焉後、そして生産終了後にどのような評価を受けているのでしょうか。
驚くべきことに、その人気は衰えるどころか、中古市場において安定した需要と価格を維持しています。「ダサい」と評されたバイクが、なぜ今もなお人気なのでしょうか。
生産終了後も人気が続く理由
- 唯一無二の存在価値の確立:ブームの最盛期には「TWの二番煎じ」と見なされましたが、そのTWもFTRも、そしてバンバン200も全て生産終了となりました。その結果、「ファットタイヤ」と「レトロな雰囲気」を併せ持つストリートバイクというジャンル自体が希少な存在となりました。時代が一巡し、他人とは違う個性を求める層から、バンバン200の独特なスタイルが「ダサい」ではなく「個性的でおしゃれ」として再評価されているのです。
- カスタムベースとしての不変の需要:カスタム人気の高さは健在です。シンプルな構造はDIYでのカスタムにも最適であり、「自分だけの一台」を作りたいという層から常に一定の需要があります。
- 現代のニーズとの合致:スピードや性能を競うのではなく、ゆったりとバイクライフを楽しみたいという「スローライフ」志向は、現代においてむしろ強まっています。バンバン200の持つ「競争からの解放」という哲学が、そうした現代のニーズと完璧に合致したのです。
中古市場での価格動向と選び方
中古車価格は、年式や走行距離、カスタムの程度によって大きな幅がありますが、全体として価格は高値で安定、あるいは微増傾向にあります。
【選び方のポイント】キャブ車 vs FI車
- キャブレターモデル (2002〜2007年式):価格が比較的安価な傾向があります。構造がシンプルなためDIYでの整備やカスタムがしやすく、キャブレター特有の「味」を求める層に人気です。ただし、冷間時の始動性やアイドリングの安定性ではFIに劣ります。
- FIモデル (2007〜2017年式):フューエルインジェクション(燃料噴射装置)により、冬場でも始動性が良く、アイドリングも安定しています。中古市場ではこちらの方が人気が高く、価格も高値で取引される傾向があります。一部でFI特有のエンスト癖が報告されることもありますが、多くは調整やメンテナンスで改善可能です。
生産終了から時間が経過し、良質なノーマル車両や、センス良くカスタムされた車両は減りつつあります。ブームの追随者だったモデルが、今や真のカルトクラシック(熱狂的なファンを持つ名車)としての地位を確立しつつあるのです。
バンバン200のカスタム事例と方向性
バンバン200の「ダサい」という評価を、最も雄弁に、そして視覚的に覆すのが「カスタム」の世界です。前述の通り、バンバン200は「白紙のキャンバス」であり、オーナーのセンス次第でノーマルの姿からは想像もつかないほど劇的な変貌を遂げます。
ノーマルでは「野暮ったい」とされたファットタイヤやフレームラインが、カスタムの手法によっては、他のバイクでは出し得ない強烈な個性を放つ「武器」に変わるのです。
人気のカスタムスタイルには、いくつかの方向性があります。
1. トラッカー/スクランブラー
最も定番であり、バンバン200のルーツにも近いスタイルです。
- ノーマルの分厚いシートを、薄く短いタックロールシートやフラットシートに変更。
- 前後の大型フェンダーを取り払う(フェンダーレス化)か、小型のものに交換。
- テールランプやウインカーも小型でスタイリッシュなものに変更。
- マフラーをスーパートラップのようなアップタイプや、抜けの良い社外品に交換し、軽快感を演出します。
これらのカスタム(いわゆるスカチューン)により、ノーマルの重たい印象は払拭され、非常に軽快でワイルドなイメージに生まれ変わります。
2. ボバー/チョッパー
リアのファットタイヤをデザインの主役として活かすスタイルです。
- リアフェンダーをタイヤギリギリに這うような形状のもの(リブフェンダーなど)に変更。
- シートは極端に低いソロシート(一人乗り用)を装着。
- ハンドルをTバーや一文字ハンドル(ドラッグバー)に変更し、低いスタンスを強調します。
- 一部のカスタムショップでは、フロントにもリアと同じファットタイヤを装着し、圧倒的な存在感を放つスタイルも構築されています。
3. ネオレトロ/カフェレーサー
数は少ないですが、バンバン200をベースに全く異なるジャンルを構築する試みもあります。プロのビルダーによるショーカスタムでは、特注のアルミタンクやフレーム加工、未来的なヘッドライト(縦2連プロジェクターなど)を組み合わせ、バンバン200がベースとは信じられないようなマシンが製作されています。
これらのカスタム事例を見れば、「バンバン200はダサい」という評価が、いかにノーマル状態という一面的な見方に過ぎなかったかが理解できるでしょう。それはオーナーの個性を表現するための、最高の素材なのです。
総括:バンバン200はダサいのではなく個性的なバイク
スズキ バンバン200が「ダサい」と評される理由と、それが「誤解」である可能性について、多角的に掘り下げてきました。
- バンバン200が「ダサい」と言われる主な理由は3つ
- 理由①は極太ファットタイヤと車体のアンバランス感
- 理由②は16PSというライバルに劣る非力なエンジン性能
- 理由③はTWブームの中で「二番煎じ」と見なされた歴史
- 独特な「モコモコ」シートも野暮ったいと評される一因
- しかし「遅さ」は「スローライフ」の哲学という側面がある
- 速度競争から解放され「トコトコ」走る楽しさが魅力
- 「ダサい」評価はノーマル状態で判断されていることが多い
- バンバン200の真価は「カスタムベース」としてのポテンシャル
- シンプルな構造でトラッカーやボバーなど自由な改造が可能
- 実用面では「足つきの良さ」が初心者にも安心
- 燃費はリッター30km以上が期待できるがタンク容量は少ない
- 生産終了理由は排ガス規制への対応コストが要因
- 生産終了後も中古市場では唯一無二のスタイルで人気
- 特にFIモデルは安定した価格で取引されている
- バンバン200は速さではなく個性を楽しむバイクである
最後に
今回は、スズキ バンバン200が「ダサい」と評価される理由と、それが大きな誤解である可能性について詳しく解説しました。
独特のファットタイヤや性能面での「遅さ」、登場した時代の背景がネガティブな評価に繋がった一方で、その本質が「スローライフ」の哲学やカスタムベースとしての無限の可能性にあることをご理解いただけたのではないでしょうか。
バンバン200の魅力である「カスタム」にさらに興味を持たれた方は、具体的なカスタム事例を紹介した記事も参考になるでしょう。
また、バンバン200と同じように、ゆったり乗れる他の個性的なバイクと比較検討したい方は、レトロ・ストリートバイクのまとめ記事もおすすめです。