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トライアンフ スピードマスターの評判が気になっていますね。英国車ならではの流麗でクラシカルなデザインに強く惹かれつつも、実際のオーナー評価はどうなのか、購入して後悔しないか、様々な疑問が浮かぶのは当然のことです。
例えば、クルーザー特有の「曲がらない」という特性はどれほどのものか、足つきやシート高(705mm)といった扱いやすさ、高速道路での走行性能も知りたいポイントでしょう。また、競合車種としてハーレーダビッドソンや、ホンダのレブル1100との比較も購入の決め手になるかもしれません。
さらに、弱点は何ですか? という具体的な懸念、燃費は? 最高速は? といったパフォーマンス、中古車を選ぶ際の注意点、そして外車ならではの維持費はどれくらいかかるのか。知りたい情報は山積みのはずです。
この記事では、トライアンフ スピードマスターに関するWeb上の評判やオーナーのインプレッションを徹底的に分析。ハーレーとは一線を画すその独自の魅力と、購入前に必ず知っておくべき現実的な「弱点」について、客観的な視点で詳しく解説していきます。
この記事を読むと分かること
- オーナー評価に基づく具体的な長所(抜群の足つき・上品なトルク感)
- 購入後に後悔しやすい5つの明確な弱点(バンク角・航続距離など)
- 競合(ハーレー、レブル1100)とのキャラクターの決定的な違い
- 信頼性や維持費(車検・点検)に関する現実的な情報
デザインは最高だが、本当に自分に扱えるのか、その走りは満足できるものか。この記事が、あなたの疑問を解消するための一助となれば幸いです。
トライアンフ スピードマスターの評判:ハーレーにない3つの魅力

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トライアンフ スピードマスターが多くのライダーを魅了する理由は、その美しい外観だけではありません。ハーレーダビッドソンなどのアメリカンVツインとは異なる、英国車ならではの独自の魅力が、オーナーから高く評価されています。ここでは、特に評判の高い3つの魅力を深掘りします。
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魅力①:圧倒的な足つきの良さ(シート高705mm)
トライアンフ スピードマスターの評判を分析する上で、「シート高705mm」という数値は、最大の魅力と言っても過言ではありません。この数値は、多くのライダー、特に日本の交通環境において絶大な安心感をもたらす要素として、オーナーレビューで一貫して高く評価されています。
では、なぜこの「705mm」がそれほどまでに魅力的なのでしょうか。まず、数値自体が絶対的に低いことが挙げられます。例えば、国産クルーザーのホンダ レブル1100が710mm(2025年モデル)と肉薄していますが、競合として比較されるハーレーダビッドソンのスポーツスターSは765mmです。この6cmの差は非常に大きく、体感的な安心感を大きく左右します。
しかし、足つきの良さはシート高の数値だけで決まるものではありません。スピードマスターが「抜群に足つきが良い」と評価される理由は、その車体設計にあります。
シート形状と車幅の貢献
スピードマスターのライダーシートは、深くえぐられた「コブラシート」スタイルを採用しています。これにより、着座位置が低くなるだけでなく、シートの前方がスリムに絞り込まれています。結果として、ライダーの太ももが圧迫されず、足をまっすぐ地面に下ろすことが可能です。
車幅が広いバイクやシートの角が張っているバイクでは、同じシート高でも足を外側に開かなくてはならず、結果的に足つきが悪化することがあります。スピードマスターは、この点で非常によく計算されています。
低重心設計と重量バランス
車両重量は約264kgと、決して軽量ではありません。しかし、多くのオーナーが「数値ほどの重さを感じない」とコメントしています。これは、水冷並列2気筒エンジンを低い位置にマウントし、フレーム設計によって徹底的な低重心化が図られているためです。
シート高が低く、さらに重心も低い。この二つの要素が組み合わさることで、ライダーは両足でどっしりと車体を支えることができます。信号待ちでの停車はもちろん、路肩への寄せ、傾斜地での停止といった、バイクの扱いで最も気を使うシーンでの心理的な負担が劇的に軽減されるのです。
身長160cm台のライダーからの評価
Web上のオーナーレビューを見ると、身長160cm台のライダーからも「両足の踵(かかと)がほぼ接地する」「不安なく乗れる」といった肯定的な意見が多く見られます。大型バイク、特に重量級のクルーザーに乗りたいけれど体格に不安がある、あるいは体力的な衰えを感じ始めたベテランライダーにとって、この足つきの良さは、他の高性能なスペックを凌駕するほどの決定的な購入理由となっています。
この「絶対的な安心感」こそが、トライアンフ スピードマスターがハーレーや他のクルーザーと一線を画す、第一の魅力なのです。
魅力②:豊かな低速トルクと上品な鼓動感
トライアンフ スピードマスターの心臓部には、トライアンフ公式サイトでも「ハイトルク(High Torque)」と謳われる、1200ccの水冷SOHC並列2気筒エンジンが搭載されています。このエンジンこそが、スピードマスターのキャラクターを決定づける第二の魅力です。
「スピードマスター」という名前とは裏腹に、このバイクは最高速や高回転域でのパワーを追求するマシンではありません。その公称スペックは、最高出力が78PS/6,100rpmであるのに対し、最大トルクは106Nmをわずか4,000rpmという低い回転数で発生させます。
これは、現代のバイクとしては極めて低回転域に振ったセッティングであり、アイドリングのすぐ上から分厚いトルク(車体を前に押し出す力)が湧き出ることを意味します。

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270度クランクが生み出す「上品な鼓動感」
スピードマスターのエンジンが「味わい深い」と評価される最大の理由は、270度クランクシャフトの採用にあります。一般的な並列2気筒(360度クランクや180度クランク)とは異なり、270度クランクは不等間隔爆発を生み出します。
具体的には、「ドン、ドドン…」という不規則なリズムの爆発間隔となり、これがV型2気筒エンジン(Vツイン)に似た脈動感、すなわち「鼓動感」を生み出します。しかし、ハーレーダビッドソンに代表されるアメリカンVツインの「ドコドコドコ!」という荒々しく大地を蹴るような鼓動とは一線を画します。
スピードマスターの鼓動感は、より洗練され、角が取れた「トコトコトコ…」という上品なフィーリングです。オーナーからは「この上品な鼓動感が心地よい」「疲れない程度にバイクの存在を感じられる」と、そのジェントルな乗り味が高く評価されています。
街乗りでの圧倒的な扱いやすさ
この低速トルク重視のエンジン特性は、日本の交通環境で絶大なメリットをもたらします。ストップ&ゴーが多い市街地において、スロットルをわずかに開けるだけで車体がスムーズに発進し、巡航速度まで力強く加速します。
頻繁なシフトチェンジを要求されることなく、トップギアやそれに近いギアのままでも、スロットル操作だけで柔軟に速度をコントロールできるのです。この「ズボラな運転」を許容する懐の深さが、リラックスしたクルージングを可能にします。
「スピード」を競うのではなく、エンジンの豊かなトルクと上品な鼓動感を「味わう」。これこそがスピードマスターの本質であり、慌ただしい日常からライダーを解放してくれる、成熟した大人のための魅力と言えるでしょう。
魅力③:ブレンボ標準装備と高級感ある仕上げ
トライアンフ スピードマスターが「プレミアム・クルーザー」として高く評価される理由は、エンジンフィールだけでなく、その車体を構成するコンポーネントの品質と、細部にわたる美しい仕上げにあります。
特に安全性能と直結するブレーキシステムには、そのこだわりが明確に表れています。スピードマスターは、クルーザーカテゴリーのバイクとしては異例とも言える、フロントブレーキにBrembo(ブレンボ)製のØ310mmツインディスクを採用しています。キャリパーは2ピストンのスライディングアキシャルタイプですが、264kgの車重を受け止めるには十分以上の制動力を発揮します。
オーナーの評判でも、「クルーザーにありがちなブレーキの甘さが一切ない」「車重を忘れるほどコントローラブルで強力」「ブレンボというだけで所有感が満たされる」と、その性能とブランド力に絶大な信頼が寄せられています。
細部に宿る「英国クラシック」の美学
スピードマスターのもう一つの魅力は、単なる工業製品を超えた「工芸品」とでも言うべき、そのディテールの作り込みです。
所有感を満たす具体的なディテール
- 空冷風エンジンの造形:水冷エンジンでありながら、シリンダーヘッドには美しい冷却フィンが刻まれ、クラシックな空冷エンジンの外観を巧みに再現しています。
- 隠された触媒:エキゾーストパイプの途中に配置される触媒(キャタライザー)ボックスを、エンジンの下部に巧みに隠すツインスキン構造を採用。これにより、クラシックバイクのようなクリーンなエキゾーストラインを実現しています。
- キャブレター風スロットルボディ:燃料噴射装置(フューエルインジェクション)のスロットルボディを、あえて古いキャブレターのようなデザインでカバーしています。
- ハードテイル風スイングアーム:リアサスペンションが見えないクラシックな「ハードテイル」フレームを模倣し、モノショックサスペンションをシート下に隠す巧妙な設計(ケージスタイルスイングアーム)。
- ワイヤースポークホイール:クラシックな雰囲気を高める16インチのワイヤースポークホイールを標準装備しています。
これらのディテールは、走行性能に直接寄与するものではありません。しかし、「最新の技術を、伝統的な美しいデザインで包み込む」という、トライアンフの「モダンクラシック」戦略の核心を示すものです。
樹脂パーツを多用したバイクとは一線を画す、金属の重厚感と深い塗装の艶。これらが組み合わさることで、オーナーは信号待ちでふとタンクに目を落とした時や、ガレージでバイクを磨き上げる時に、深い「所有する喜び」を感じることができます。この高級感こそが、ハーレーとも国産車とも異なる、スピードマスター独自の魅力となっています。
ハーレー(スポーツスターS)との違いを比較

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トライアンフ スピードマスターを検討する際、ほぼ全ての人が比較対象として意識するのが、ハーレーダビッドソンの「スポーツスターS」でしょう。どちらもトラディショナルなクルーザーとは一線を画す「モダンクルーザー」ですが、その思想とキャラクターは正反対と言ってもよいほど異なります。
スピードマスターが「英国の伝統美と現代技術の融合(モダンクラシック)」を体現しているのに対し、スポーツスターSは「米国の伝統を破壊し、未来的なパワーを追求(モダンマッスル)」したモデルです。
最大の違いはエンジンです。スピードマスターが低回転域のトルクと鼓動感を重視したジェントルな並列2気筒(78PS)であるのに対し、スポーツスターSは高回転域でパワーを絞り出す水冷Vツイン「Revolution Max 1250T」(約121HP)を搭載。このエンジンは、アドベンチャーバイクであるパンアメリカにも搭載されるハイパフォーマンスユニットであり、その性格はクルーザーというよりスポーツバイクに近いものです。
比較①:ライディングポジションと快適性
ポジションも対照的です。スピードマスターは手前に引かれた「ビーチバー」ハンドルとフォワードコントロールにより、比較的リラックスした王道のクルーザーポジションを提供します。対してスポーツスターSは、低いハンドルとフォワードコントロールの組み合わせにより、ライダーは前傾姿勢を強いられるアグレッシブなポジションとなります。
そして決定的なのが足つき性です。スピードマスターのシート高が705mmであるのに対し、スポーツスターSは765mmと、実に6cmも高くなります。この差は、前述の通り安心感に直結します。
比較②:価格と装備
価格面でも違いがあります。スポーツスターSは、その先進的なエンジンやフルカラーTFTディスプレイ、コーナリングABSといった高度な電子制御を搭載していることもあり、スピードマスターよりも高価な価格設定となっています。(2025年10月時点の国内メーカー希望小売価格比較)
比較③:キャラクターの決定的な違い
スピードマスターは「ゆったりと流し、景色を楽しむ」ことを得意とするバイクです。その代わり、積極的なコーナリングやスポーツ走行は苦手です。
対してスポーツスターSは、「パワーで押し切る」爽快感を追求したバイクであり、直線番長的な性格を持ちます。体を倒し込むようなワインディング走行には不向きですが、アクセル一発で突き抜けるような加速感は、スピードマスターでは決して得られません。
どちらが優れているかではなく、あなたが求めるバイクライフが「上質な巡航」なのか「刺激的な加速」なのかで選ぶべきバイクなのです。
ホンダ レブル1100との違いを比較

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もう一台の重要な比較対象が、ホンダの「レブル1100」です。価格帯が近く、日本での販売台数も多いこのモデルは、スピードマスターの最大のライバルと言えるでしょう。
比較①:価格とコストパフォーマンス
最も明確な違いは価格です。レブル1100(MT)の新車価格は約110万円からであるのに対し、スピードマスターは約179万円から。実に約70万円の価格差があります。
この価格差は、単純なスペックや装備の差だけでは説明がつきません。レブル1100も1082ccの並列2気筒エンジン(87PS)を搭載し、ABSやトラクションコントロールといった現代的な装備を標準で備えています。シート高は710mm(2025年モデル)で、スピードマスターの705mmとほぼ同等の足つき性です。
比較②:デザインとブランド価値
では、この70万円の差は何に由来するのでしょうか。それは「デザインの質感」と「ブランド価値」、そして「所有する喜び」という、数値では測れない部分にあります。
レブル1100は、ミニマルでモダンなデザインが特徴です。シンプルで洗練された美しさがあり、日本の街並みにもよく馴染みます。対してスピードマスターは、クラシカルで重厚感のあるデザインです。前述の空冷風エンジンやワイヤースポークホイール、金属の輝きといったディテールは、レブルにはない「工芸品」としての魅力を持ちます。
また、「トライアンフ」という英国の伝統あるブランドに乗っているという満足感は、国産車では得られない特別な所有感をもたらします。これは、バイクを単なる移動手段ではなく、趣味の対象として深く愛でたい人にとって、大きな価値となります。
比較③:実用性と合理性
一方で、実用性ではレブル1100が圧倒的に優位です。燃料タンク容量は13.6Lとスピードマスターの12L(2025年モデル)より大きく、航続距離に余裕があります。また、ホンダの正規ディーラーは全国に数多く存在し、メンテナンスの利便性も高いです。部品代や工賃も、輸入車であるトライアンフより安価です。
「合理的で扱いやすいバイクが欲しい」ならレブル1100を。「多少の不便さがあっても、所有する喜びを最優先したい」ならスピードマスターを選ぶべきでしょう。
高速走行とクルコンの快適性
トライアンフ スピードマスターは、標準装備としてクルーズコントロールを搭載しています。これは、高速道路での長距離走行において、非常に大きなメリットとなります。
クルコンを設定すれば、アクセル操作から解放され、右手の疲労が劇的に軽減されます。特に、低速トルクが豊かなスピードマスターのエンジン特性と組み合わさることで、100km/h前後の巡航では、まるでソファに座っているかのようなリラックスした姿勢で流し続けることができます。
ただし、最高速を追求するバイクではありません。エンジンは高回転域よりも低中速域にセッティングされているため、140km/h以上の速度域では、振動や風圧が気になり始めます。スピードマスターの真価は、「速く走る」ことではなく「楽に、長く走る」ことにあるのです。
トライアンフ スピードマスターの弱点:購入前に知るべき5つの現実

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魅力的なスピードマスターですが、完璧なバイクは存在しません。ここからは、オーナーが実際に感じている「弱点」を正直にお伝えします。これらを理解した上で購入すれば、後悔することはありません。
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弱点①:非常に浅いバンク角(ステップを擦りやすい)
スピードマスターの最大の弱点、それはバンク角が非常に浅いことです。クルーザー全般に言える特性ですが、スピードマスターは特にその傾向が顕著です。
具体的には、車体を傾けると、すぐに左右のフットレストの底面に取り付けられた「バンクセンサー(接地を知らせるための突起物)」が地面に接触します。軽い交差点の右左折でも、慣れないうちは「ガリッ」という音とともにステップが擦れる感触が伝わり、驚くことでしょう。
これは故障ではなく、車体設計上の特性です。ロー&ロングなクルーザースタイルを実現するために、低いシート高と低重心を優先した結果、どうしてもバンク角が犠牲になるのです。
ワインディングでのストレス
この浅いバンク角は、山道や峠道といったワインディングロードを走る際に、大きなストレスとなります。コーナーごとにステップを擦り、車体を起こさざるを得ないため、リズミカルで楽しいコーナリングは望めません。
「スポーティに峠を攻めたい」「ワインディングこそバイクの醍醐味だ」と考えるライダーには、スピードマスターは明確に不向きです。このバイクは、直線や緩やかなカーブを流すことに特化したクルーザーであることを、購入前に必ず理解しておく必要があります。
弱点②:小さな燃料タンク(12Lで航続距離が短い)

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スピードマスターの燃料タンク容量は12L(2025年モデル)です。これは、1200ccの大型クルーザーとしては、かなり小さい部類に入ります。
実燃費は走行条件によって異なりますが、高速道路中心で約18~20km/L、一般道中心だと15~18km/L程度とオーナーからは報告されています。仮に平均燃費を17km/Lとすると、満タン(12L)からの航続距離は約200km強となります。
つまり、ガソリンスタンドが200km以上離れているようなルートは避けるべきであり、長距離ツーリングでは頻繁な給油が必要となります。これは、のんびりとしたツーリングを楽しむ分には大きな問題ではありませんが、計画性を持った給油が求められます。
なお、2026年モデルでは燃料タンク容量が14Lに拡大されることが発表されており、この弱点は改善される見込みです。
弱点③:標準状態での積載性の低さ
スピードマスターは、デザイン優先のミニマルなクルーザーであるため、標準状態では荷物を積むスペースがほとんどありません。シート下に小物入れはなく、タンデムシートの後ろにキャリアもありません。
日帰りツーリング程度であれば、小型のバックパックで対応できますが、宿泊を伴うツーリングや、お土産を買って帰るような場合には、追加の積載手段が必須となります。
幸い、トライアンフ純正およびサードパーティ製のサイドバッグ(パニアケース)やリアバッグ、シーシーバー付きのバックレストなど、カスタムパーツは豊富に用意されています。しかし、これらは別途購入が必要であり、初期費用が追加でかかることは覚悟しておく必要があります。
弱点④:ハイオク指定で燃料代が高い
スピードマスターはハイオクガソリン(無鉛プレミアム)指定です。レギュラーガソリンと比較して、リッター当たり約10~15円高い燃料を使い続ける必要があります。
年間3,000km走行するとして、平均燃費を17km/Lとすると、年間のガソリン使用量は約176L。ハイオクとレギュラーの価格差を1リットル12円とすると、年間で約2,100円の差額となります。
金額自体は大きくないかもしれませんが、「同じ走行距離でもレブルより燃料代が高い」という事実は、日々のランニングコストとして地味に響いてきます。
不安①:英国車の信頼性は大丈夫?
もう一つの懸念事項は、「英国車」ひいては「外車」全般に対する信頼性・故障への不安です。かつての英国車(特に1970年代以前)には、オイル漏れや電気系統のトラブルがつきものという、いわゆる「壊れやすい」イメージが強くありました。
しかし、現代のトライアンフ(ヒンクレー・トライアンフ)において、その古い神話はもはや当てはまりません。日本のメーカーと同等の高い工作精度と品質管理が導入されており、信頼性は劇的に向上しています。
もちろん、工業製品である以上、故障リスクはゼロではありません。オーナー報告の中には、センサー類の不具合や軽微なオイル滲みといったトラブルが散見されることもありますが、これは国産車でも起こり得る範囲のものです。新車であれば2年間のメーカー保証も付帯します。
「外車だからすぐに壊れる」という先入観は捨て、しっかりとした正規ディーラーのサポートを受けられる体制を確認することの方が、現代の英国車と付き合う上では重要と言えるでしょう。
オーナーが語る維持費(車検・点検)
信頼性の次に気になるのが、車検や点検といった「維持費」です。結論から言えば、1回あたりの点検・車検費用は、国産バイクを扱う販売店よりも高額になる傾向が強いです。
これは、トライアンフがプレミアムブランドであり、正規ディーラーでの整備工賃(レート)が国産車ディーラーより高く設定されていることや、交換部品(純正オイル、フィルター、プラグなど)が輸入品であり、部品代自体も高価なためです。燃料もハイオクガソリン指定であるため、日々の燃料代もレギュラー仕様車よりかかります。
「やはり外車は維持費が高いのか…」と落胆するかもしれませんが、スピードマスターには、このデメリットを補って余りある大きなメリットが存在します。
メリット:長いサービスインターバル
トライアンフがメーカーとして推奨する定期点検のインターバル(間隔)は、12ヶ月ごとが基本となっています。国産バイクの多くが6,000kmごと(または12ヶ月)の点検を推奨していることと比較すると、時間ベースでは同じですが、走行距離の多いライダーにとっては入庫頻度を減らせる可能性があります。
つまり、1回あたりの点検費用が国産の1.5~2倍だったとしても、適切なメンテナンスサイクルを守れば、長期間で見た総所有コスト(維持費)は、走行条件によっては国産バイクと大差ない可能性があるのです。
高い技術力と品質への自信があるからこそ設定できるこの信頼性は、オーナーにとって経済的なメリットであると同時に、トライアンフというブランドの信頼性の高さを物語っています。
中古車選びで失敗しないポイント
新車価格が200万円近いプレミアムバイクであるため、「中古車」での購入を検討する人も多いでしょう。スピードマスターを中古で探す際には、後悔しないために絶対に知っておくべき重要な注意点があります。
それは、「2018年式」という明確な境界線の存在です。
「トライアンフ スピードマスター」という名前のバイクは、実は2003年から存在しています。しかし、2017年までに販売されていた旧型(前期型)スピードマスターは、空冷865ccエンジンを搭載した、全く設計の異なるバイクです。
現在、私たちが話題にしている「ボンネビル ボバー」ベースの、水冷1200ccハイトルクエンジン、ブレンボブレーキ、クルーズコントロールなどを搭載した現行(後期型)モデルは、2018年にフルモデルチェンジされて以降のモデルを指します。
中古車検索での注意点
中古車情報サイトで単純に「スピードマスター」と検索すると、これら新旧のモデルが混在して表示されます。空冷モデルは価格が非常に安価(100万円以下)であるため魅力的に見えますが、もしあなたが「1200ccの鼓動感」や「ブレンボブレーキ」といった現行モデルの評判を聞いて探しているのであれば、それを買っても全くの別物であり、100%後悔します。
中古車を探す際は、必ず「2018年式以降」「排気量1200cc」「水冷」という条件で絞り込んでください。
その他のチェックポイント
2018年式以降のモデルに絞り込んだ上で、以下の点もチェックしましょう。
- カスタムの状態:クルーザーはカスタム率が非常に高いバイクです。特にマフラーや灯火類(ウインカー、テールランプ)が交換されている場合、車検に対応しているか(保安基準適合か)を確認しましょう。配線処理が雑なDIYカスタムが施されていないかも重要です。
- 消耗品の状態:タイヤの溝、ブレーキパッドの残量、チェーンやスプロケットの消耗度合いは、購入後の追加出費に直結します。
- ステップの傷:弱点①で解説した通り、ステップを擦りやすいバイクです。ステップ底面のバンクセンサーがどれくらい削れているか、あるいはステップ本体やマフラー下部に転倒によるものではない擦り傷がないかを確認しましょう。
- 保証の有無:最も安心なのは、トライアンフ正規販売店が扱う「認定中古車」です。これらは専門のメカニックによる整備と、購入後の保証が付帯するため、初めての輸入車としても安心感が格段に違います。
安い個体には安いなりの理由があります。特に輸入車の中古は、信頼できる販売店選びが最も重要です。
総括:トライアンフ スピードマスターの評判と向いている人
ここまで、トライアンフ スピードマスターの評判について、ハーレーやレブルとの比較を交えながら、魅力と弱点の両面から詳細に解説してきました。
- トライアンフ スピードマスターは英国製のプレミアム・モダンクルーザーである
- ハーレーダビッドソンとは異なる、洗練されたクラシカルなデザインが最大の魅力
- 1200ccエンジンは高回転型ではなく、低速トルク重視で上品な鼓動感が特徴
- シート高は705mmと抜群に低く、足つきの安心感はオーナー評価が非常に高い
- 車重は264kgと重いが、低重心と足つきの良さで跨れば重さを感じにくいとの声多数
- フロントブレーキはブレンボ製ツインディスクで、制動力と信頼性は高く評価されている
- クルーズコントロールやライディングモードなど、現代的な電子制御も標準装備で快適
- 最大の弱点はバンク角が浅いことで、ステップを非常に擦りやすい
- ワインディングや峠道をスポーティーに走るバイクでは決してない
- 燃料タンク容量は12Lと小さく、航続距離は約200km強と短い点がデメリット
- 標準状態での積載性は低いため、ツーリングにはサイドバッグ等の追加が推奨される
- 「英国車は壊れやすい」という評判は過去のもので、現代モデルの信頼性は向上している
- 維持費は1回の点検費用こそ高いが、適切なメンテナンスサイクルがメリット
- レブル1100より高価だが、その価格差はデザインの質感や所有感にある
- 「スピードを求めず、上質なスタイルと鼓動感をゆったり楽しむ」成熟したライダーに最適
最後に
今回は、トライアンフ スピードマスターの評判について、ハーレーとは異なる独自の魅力と、購入前に知るべき弱点を詳しく解説しました。
スピードマスターは、「スピード」という名前とは裏腹に、「速く走ること」ではなく「豊かに走ること」を最優先に設計されたバイクです。
圧倒的な足つきの良さ、低速から湧き上がるトルクと上品な鼓動感、そして工芸品のような美しいディテール。これらは、ハーレーの持つワイルドさや、国産バイクの持つ合理性とは全く異なる、英国車トライアンフならではの世界観です。
その代わり、浅いバンク角や小さな燃料タンクといった、明確な「弱点(=特性)」も併せ持ちます。このバイクは、乗り手に「速さ」や「利便性」を求めることを許しません。
もしあなたが、バイクに求めるものが「スポーツ走行のスリル」や「コストパフォーマンス」であるならば、スピードマスターは選ぶべきではありません。しかし、「体力的な不安を解消し、上質なバイクを所有する喜びを感じながら、自分のペースでゆったりと景色を楽しみたい」と考える成熟したライダーにとって、これほど完璧にニーズを満たしてくれるバイクは他にないでしょう。
この記事が、あなたのバイク選びの確かな指針となれば幸いです。
トライアンフのモダンクラシックシリーズにさらに興味を持たれた方や、英国車全般の維持費について詳しく知りたい方は、他の関連記事も参考になるでしょう。