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ビモータ テージH2の価格を検索すると、驚くべき数字が目に飛び込んできます。なんと866万8000円という破格の価格設定。これは一体どんなバイクなのでしょうか? 高級バイク愛好家の私が、この桁外れの金額の背景にある真の価値について解説します。
ビモータ テージ H2は、イタリアの名門ビモータとカワサキの歴史的協業によって誕生した革新的スーパーバイクです。世界限定250台という希少性と、ハブセンターステアリングというビモータ独自の技術、そしてカワサキNinja H2由来の242馬力スーパーチャージドエンジンの組み合わせが、この866万8000円という価格の背景にあります。
この記事を読むと分かること
- ビモータ テージ H2の正確な価格と、その価格設定の理由
- 世界限定250台の希少性と入手可能性について
- 866万円という高額投資に見合う技術的特徴と性能
- 中古市場の動向とコレクターアイテムとしての将来性
「高すぎる」と思うか「価値がある」と考えるか。866万8000円という価格に隠された真実を、徹底的に解説していきます。
ビモータ テージ H2の価格と性能:世界限定250台の希少価値

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ビモータ テージ H2の基本的な価格情報と、そのパフォーマンスについて詳しく見ていきましょう。世界限定250台という希少性が、このバイクにどのような価値をもたらしているのかを解説します。
- 866万8000円の新車価格とその内訳
- 世界限定250台:希少性と入手可能性
- テージ H2に採用されている先進技術
- カワサキ製スーパーチャージドエンジンの性能
- トリコロールとカーボン:2つのカラーバリエーション
- 正規輸入元と購入方法
866万8000円の新車価格とその内訳
ビモータ テージ H2の新車価格は、2021年の日本導入時点で税込み866万8000円(本体価格788万円、消費税78万8000円)と公表されています。この価格は国内正規輸入発売元であるモトコルセによって設定されたものです。
この866万8000円という金額は、一般的なバイク価格と比較するとかなり高額に感じられますが、その内訳を詳しく見ていくと納得できる要素があります。まず、ビモータ テージ H2はイタリアのリミニ工場で熟練の職人によって一台一台手作業で組み立てられています。エンジン以外の主要パーツはほとんどがCNCマシンによるアルミニウム削り出しパーツで、その精密さと品質は量産車とは一線を画しています。
また、カーボンファイバー製のフェアリングや外装パーツも高級素材を使用したハンドメイド品です。さらに、ブレンボ製のブレーキシステムやオーリンズ製のサスペンション、OZレーシング製の鍛造アルミホイールなど、各部に最高級のパーツを惜しみなく採用しています。
こうした希少素材と職人技が織りなす特別なバイクとしての価値に加え、世界限定250台という希少性も価格に反映されています。実際、同様の限定生産高級バイクである他のメーカーの特別モデルでも、数百万円~1000万円超えの価格設定は珍しくありません。

世界限定250台:希少性と入手可能性
ビモータ テージ H2は、全世界でわずか250台限定のプレミアムモデルです。この限られた生産数は、高いレベルの品質管理と職人技術を維持するための戦略的な選択であるとともに、希少価値を高める要素となっています。
日本に割り当てられた台数は公式には明らかにされていませんが、北米・欧州市場が優先されることを考えると、非常に限られた台数だと推測できます。実際、2021年の初回入荷時には、日本市場向けの個体はすでに予約で埋まっていたという情報もあります。
入手可能性という観点では、正規輸入元であるモトコルセを通じての予約注文が基本となりますが、現在は生産終了しており新車の入手は非常に困難です。希少性の高いモデルであるため、オーナーからの売却も滅多にないというのが現状です。
テージ H2が注目を集める最大の理由のひとつは、カワサキとビモータの協業第一弾モデルとしての歴史的価値です。2019年にカワサキがビモータの株式を取得したことで始まったパートナーシップが生み出した初の成果物として、バイク史に残る特別なモデルとなっています。
こうした歴史的背景と極めて限られた生産台数により、テージ H2は一般的なバイクとは異なる「コレクターズアイテム」としての側面も持っています。そのため、将来的には新車時の価格以上の価値を持つ可能性も高いとみられています。
テージ H2に採用されている先進技術
テージ H2の最大の特徴は、ビモータが長年にわたって開発・熟成させてきた「ハブセンターステアリング」技術です。これは一般的なバイクのフロントフォークとは全く異なる構造で、前輪の中心部(ハブ)にステアリング機構を持つ革新的なシステムです。通常のバイクではブレーキをかけると前に沈み込むのに対し、このシステムではブレーキング時の姿勢変化が最小限に抑えられます。
フロント部分は、CNCアルミニウムとカーボンファイバーを航空宇宙技術で融合させた特殊なスイングアームを採用。内部は徹底的に肉抜きされた中空構造となっており、高剛性と軽量化を両立しています。このフロントスイングアームのピボット位置を車体の重心より低く設定することで、さらに優れた操縦安定性を実現しました。
また、前後のサスペンションは、エンジン後方に並列配置されたオーリンズ製TTXショックアブソーバーを使用。これらのサスペンションは、エキセントリックカムを回転させることでシート高を最大20mm調整できるほか、フットレストの位置も調整可能なシステムを採用しています。
ブレーキシステムには、最新のブレンボ製ラジアルモノブロックキャリパー「Stylema」を採用し、大径330mmのセミフローティングディスクと組み合わせることで、強力かつ安定した制動力を発揮します。
電子制御システムでは、ボッシュ製の小型IMU(慣性計測ユニット)を中心とした最新の電子制御を搭載。コーナリングマネジメントファンクション(KCMF)やインテリジェントアンチロックブレーキシステム(KIBS)、エンジンブレーキコントロール(KEBC)、ローンチコントロール(KLCM)などの先進機能を備えており、強大なパワーを安全に扱えるよう設計されています。

カワサキ製スーパーチャージドエンジンの性能
テージ H2のパワーユニットは、カワサキ Ninja H2から移植された998cc水冷4ストローク並列4気筒DOHCスーパーチャージドエンジンです。このエンジンは通常時でも231PS(170kW)/11,500rpmという圧倒的な最高出力を発揮し、さらにラムエア加圧時には242PS(178kW)にまで出力が向上します。最大トルクも141N・m(14.4kg-m)/11,000rpmという強大な値を誇ります。
このエンジンの特筆すべき点は、スーパーチャージャー(過給機)を搭載していることです。通常の自然吸気エンジンと異なり、強制的に空気を圧縮してシリンダー内に送り込むことで、同じ排気量から大幅に高いパワーを引き出すことが可能となっています。これにより、1000cc級でありながらリッタースーパースポーツを遥かに上回るパワーを実現しています。
エンジンの構造面では、圧縮比8.5:1と比較的低めの設定ながら、スーパーチャージャーの効果で圧倒的なパワーを発揮します。また、ドッグリングタイプのトランスミッションを採用することで、スムーズかつスピーディなシフトチェンジを可能にしています。
冷却システムとしては、エンジン、スーパーチャージャー、トランスミッションに単一の潤滑システムを採用。これによりコンパクトなエンジン設計を実現しています。また、テージ H2では、車体左側に配置されたエアダクトを備えるラムエアインテークシステムを採用し、スーパーチャージャーへ直線的に空気を供給することで、安定した高出力を発揮します。
このスーパーチャージドエンジンは、どの回転域からでも強烈な加速を可能にする特性を持ち、通常のバイクとは一線を画す走行フィーリングを提供します。特にビモータのハブセンターステアリングシステムと組み合わせることで、その強大なパワーをより安全かつ効果的に路面に伝えることができる点も大きな特徴です。
トリコロールとカーボン:2つのカラーバリエーション
テージ H2は、2種類のカラーバリエーションが用意されています。当初発売時のカラーリングは「トリコロール」(ホワイト×レッド×カーボンマットトランスパレント)と呼ばれるものでした。これはイタリア国旗の3色を思わせるビモータの伝統的なカラーリングをベースにしたもので、赤と白のコントラストに加え、カーボン素材の素地を活かした部分も組み合わされています。
2021年2月には、新たなカラーバリエーション「カーボン」(マットトランスパレント)が追加されました。このカーボンモデルは、カーボンファイバーの織り目模様を活かしたデザインで、より洗練された高級感を演出しています。名前の通り、カーボンファイバー素材の美しい織り目を表面処理によって見せるデザインが特徴です。
興味深いことに、カラーの違いによる価格差はなく、どちらも同じ866万8000円(税込)という価格設定になっています。ただし、世界限定250台の中で「カーボン」モデルがどれだけの割合を占めるのかは明らかにされていません。選択できるのは、あくまで予約時点での在庫状況に依存するようです。
実際の見た目の印象としては、トリコロールモデルがよりスポーティでビビッドな印象を与えるのに対し、カーボンモデルはより洗練された高級感と落ち着いた雰囲気を持っています。どちらのカラーも、ビモータならではの美学と職人技を感じさせる仕上がりとなっています。
なお、いずれのカラーリングも、単なる塗装ではなく、熟練の職人によるハンドペイントで仕上げられており、それぞれに微妙な個性があるのも特徴です。特にトリコロールモデルに見られる鮮やかな赤と白のコントラスト、そして精緻なラインの処理は、量産車では実現できない品質です。

正規輸入元と購入方法
テージ H2の日本における正規輸入元は「MOTO CORSE(モトコルセ)」です。モトコルセはイタリア製高級バイクやパーツの輸入販売で知られる会社で、ビモータ製品の取り扱いにおいても豊富な実績を持っています。
購入方法としては、基本的には予約注文制となっています。2020年11月から日本での予約受付が開始され、第一便は2021年1月に到着予定とされていました。世界限定250台という希少性から、発売当初は予約が殺到したと言われています。
テージ H2の購入に際しては、モトコルセ直営店での取り扱いとなります。一般的なバイクショップでは購入できないため、購入希望者はモトコルセに直接問い合わせる必要があります。また、購入後のメンテナンスやサービスについても、専門的な知識と設備を持つモトコルセでの対応となります。
支払い方法については、現金一括払いの他、ローンやリースなどの選択肢も用意されています。ただし、高額商品であるため、ローン審査基準は一般的なバイクよりも厳しく設定されている可能性があります。
また、テージ H2の購入には諸費用も考慮する必要があります。車両本体価格の866万8000円に加え、登録費用、自賠責保険料、重量税などの諸費用が別途必要となります。実際の乗り出し価格は900万円前後になると予想されます。
なお、テージ H2の購入者には、シリアルナンバー入りの証明書や専用のカバー、メンテナンスマニュアルなどが付属します。また、ビモータとモトコルセによる特別なアフターサービスも提供されており、購入後のサポート体制も充実しています。
高額バイクであるビモータ テージ H2の維持と価値

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866万8000円という高額な投資をするからには、購入後の維持費や将来的な価値についても知っておく必要があります。ここでは、テージ H2の所有にかかるコストと、希少バイクとしての価値の動向について解説します。
- 所有後の維持費と税金
- 中古市場の価格動向
- テージシリーズの歴史:1Dから3Dまで
- カワサキとの協業が生んだ革新性
- 866万円の価値:同価格帯バイクとの比較
- コレクターアイテムとしての将来性
- 総括:ビモータ テージ H2は価格も最高級の走る芸術品
所有後の維持費と税金
テージ H2のような高級バイクを所有する際は、購入時の価格だけでなく、維持費についても考慮する必要があります。まず、税金面では小型二輪自動車(251cc以上)に分類されるため、毎年の軽自動車税は年間6,000円かかります。また、自動車重量税は、初度登録から13年未満であれば1,900円/年、13年以上経過すると2,300円/年、18年以上経過すると2,500円/年と段階的に上がっていきます。
自賠責保険は小型二輪自動車の区分で、36ヵ月で約10,490円となります。ただし、車両価値を考慮すると、任意保険は充実した内容で加入することになるでしょう。車両保険を含めた総合的な保険に加入する場合、年間10万円前後の保険料を見込んでおくべきです。
車検費用は2年ごとに発生し、基本的な車検費用に加え、高性能パーツの点検や特殊な構造に対応できる専門店での整備が必要となるため、一般的なバイクよりも高額になります。おおよそ15~20万円程度を見込んでおくとよいでしょう。
日常的なメンテナンス費用も重要な要素です。テージ H2はスーパーチャージドエンジンや特殊なフロント構造を持つため、一般的なバイクショップではなく、専門知識を持つモトコルセでのメンテナンスが推奨されます。オイル交換やベーシックなメンテナンスでも、通常のバイクより高めの費用設定となっています。
消耗品の交換も考慮すべき点です。高性能を発揮するタイヤは走行距離が短くても摩耗が早く、またタイヤ自体も高価なものが使われています。前後タイヤ交換で10万円前後、ブレーキパッドなどの消耗品も含めると、年間の消耗品費用は使用頻度にもよりますが、10~20万円程度を見込んでおくべきでしょう。
ビモータのような希少価値の高いバイクでは、将来的な部品の入手性も考慮する必要があります。限定生産モデルのため、万が一の事故や故障時に必要となる特殊なパーツの確保が難しくなる可能性もあります。そのため、適切な保管環境を用意し、慎重な取り扱いが求められます。

中古市場の価格動向
テージ H2の中古市場における価格動向は、その希少性から非常に興味深い状況を示しています。世界限定250台という生産数の少なさから、中古市場に出回る個体自体が極めて少ないのが実情です。
日本国内の中古車情報サイトやオークションサイトでは、テージ H2の出品自体が非常に珍しく、出品された場合でも新車価格とほぼ同等か、場合によっては新車価格を上回る価格で取引されることもあります。実際、2021年に新車価格866万8000円で発売された個体が、2023年には900万円前後で取引されたという事例も報告されています。
この価格維持性の高さは、単に生産台数が少ないというだけでなく、テージ H2が持つ複数の価値要素によるものです。カワサキとビモータの歴史的なコラボレーションの記念すべき第一弾モデルであること、革新的なテクノロジーを搭載していること、そして職人の手作業による最高級の仕上げを持つことなどが、中古市場においても高い評価を受けています。
中古車購入の際に重要なポイントとしては、走行距離はもちろん、定期的なメンテナンス履歴や保管状態が挙げられます。特に、メンテナンス履歴がきちんと記録されており、正規ディーラーでの整備が行われている個体は、高い価格がつく傾向にあります。
また、テージ H2の前身となるテージ3Dなどの中古価格も、テージ H2の登場以降、上昇傾向にあります。これは、テージシリーズ全体への注目度が高まったことを示唆しています。特に良好な状態のテージ3Dは、300万円から400万円程度で取引されており、これは新車時の価格を考えると非常に高い価値を維持していると言えます。
将来的な価値変動については、限定生産の希少車種であることから、適切に維持・管理されていれば、少なくとも価値が大きく下落する可能性は低いと考えられます。むしろ、経年とともにコレクターズアイテムとしての価値が高まり、価格が上昇する可能性も十分にあるでしょう。
テージシリーズの歴史:1Dから3Dまで
テージシリーズは、ビモータの革新的なハブセンターステアリング技術を搭載したモデルラインとして、長い歴史を持っています。その始まりは1980年代にまでさかのぼります。当時ビモータの技術ディレクターだったピエルルイジ・マルコーニ氏が学生時代にカワサキGPZ550をベースにハブセンターステアリングの研究論文を執筆したことが、テージシリーズの原点となりました。
最初の市販モデルとなるTESI 1Dは、1990年のケルンショーで発表されました。このモデルは、ドゥカティ851のL型2気筒エンジンを搭載し、革新的なハブセンターステアリングシステムを採用していました。当時としては画期的なデザインと構造で、多くのバイクファンを驚かせました。
その後、テージシリーズは進化を続け、2000年代前半にはTESI 2Dが登場。さらに2007年にはより洗練されたTESI 3Dが発表され、2012年にはフェアリングを省いたTESI 3D Nakedも登場しました。これらのモデルは、基本的にV型2気筒エンジンを搭載し、フロントのハブセンターステアリングを特徴とする革新的なバイクとして、コアなファンを獲得していきました。
テージシリーズの最大の特徴である「ハブセンターステアリング」は、通常のバイクとは全く異なる構造を持っています。一般的なバイクではテレスコピックフォークを使用するのに対し、テージでは前輪の中心部(ハブ)にステアリング機構を持たせ、スイングアームで前輪を支持する構造となっています。これにより、ブレーキング時の姿勢変化や荷重移動を最小限に抑え、優れた操縦安定性を実現しています。
初期のテージモデルからTESI 3Dまでは、基本的な構造概念は継承されつつも、素材や製造技術の進化により、より洗練されたものになっていきました。テージ 1Dではスチールフレームが使用されていましたが、後のモデルではアルミフレームが採用され、3Dではさらに高剛性かつ軽量な構造が実現されています。
そして2019年、カワサキの資本参加という大きな転換点を経て、テージシリーズは新たな進化を遂げます。テージ H2は、それまでの進化の集大成とも言えるモデルとして、テージシリーズの新たな可能性を示したのです。

カワサキとの協業が生んだ革新性
2019年10月、バイク業界に衝撃が走りました。カワサキ重工業が経営難に陥っていたイタリアの老舗メーカー、ビモータの株式の49.9%を取得するという発表がなされたのです。この資本参加により設立されたのが、イタリアン・モーターサイクル・インベストメント(IMI)社でした。
この提携の最初の成果として、わずか1ヶ月後の2019年11月にミラノで開催されたEICMAショーで発表されたのが、テージ H2でした。この電撃的な発表は、全世界のバイクファンを驚かせると同時に、大きな期待を集めました。
テージ H2の革新性は、単に既存のビモータのハブセンターステアリング技術とカワサキのエンジンを組み合わせただけではありません。両社の技術者たちが密接に協力し、それぞれの強みを最大限に活かすよう設計されています。
特筆すべきは、カワサキのスーパーチャージドエンジンとビモータのハブセンターステアリングの融合です。一般的なフロントフォークを持つバイクでは、242馬力という途方もないパワーを制御するのは容易ではありません。しかし、ハブセンターステアリングの特性を活かすことで、強力なパワーを効率的に路面に伝達し、同時に高い安定性を確保することに成功しています。
この協業によって、ビモータは資金面での安定を得ただけでなく、カワサキの最先端の電子制御技術やエンジン技術へのアクセスを獲得。一方のカワサキは、ビモータの持つ革新的な設計思想や高級バイクメーカーとしてのブランド価値を活用することが可能になりました。
テージ H2は、この協業の象徴として、両社の技術の粋を集めた特別なモデルとなっています。カワサキのエンジニアリングの緻密さと量産技術、ビモータの革新的な設計と職人技が融合することで、どちらの会社単独では実現できなかったバイクが誕生したのです。
866万円の価値:同価格帯バイクとの比較
テージ H2の866万8000円という価格は、一般的なバイクと比較すると確かに高額です。しかし、同価格帯のハイエンドモーターサイクルと比較することで、その価値をより客観的に評価することができます。
まず同じカワサキブランドであるNinja H2カーボンは、300万円台後半という価格帯ですが、テージ H2とは約500万円もの差があります。この差額は主に、ハブセンターステアリングという独創的な機構、アルミニウム削り出しパーツの多用、そして世界限定250台という希少性によるものです。
同じ800万円台のバイクとしては、MV Agustaの限定モデルやDucatiの特別限定版などが挙げられますが、これらの多くは台数限定の特別モデルとはいえ、基本的には既存モデルをベースにしたバリエーションモデルが多い傾向にあります。一方でテージ H2は、ゼロから設計された特別な構造を持つモデルという点で、より希少価値が高いと言えるでしょう。
1000万円前後の超高級バイクとしては、Arch MotorcyclesのKRGT-1(キアヌ・リーブスが共同設立した会社のフラッグシップモデル)やPGM V8(オーストラリアの小規模メーカーによる8気筒エンジン搭載モデル)などがありますが、これらと比較しても、テージ H2のハブセンターステアリングという独自技術と、カワサキのスーパーチャージドエンジンという組み合わせは唯一無二のものです。
また価格だけでなく、パフォーマンス面でも比較する価値があります。テージ H2の242馬力という出力は、現行のMotoGPマシンに匹敵するレベルであり、市販車としては最高クラスの性能を誇ります。さらに、その重量は乾燥重量207kgと、同クラスのスーパースポーツバイクと比較しても軽量に仕上げられています。
高額な価格設定についてはもう一つの視点もあります。それは芸術品や高級時計などと同様のコレクターズアイテムとしての価値です。限定生産モデルは、その希少性から時に発売時の価格以上の価値を持つことがあります。実際、過去のビモータの限定モデルの中には、現在では当時の新車価格の2倍以上の価値を持つものも存在します。

コレクターアイテムとしての将来性
テージ H2は、単なる移動手段やスポーツバイクの枠を超え、コレクターアイテムとしての側面も持っています。世界限定250台という極めて少ない生産台数は、すでに希少価値の高さを物語っていますが、その将来性についてさらに掘り下げて考えてみましょう。
まず第一に、テージ H2はカワサキとビモータの歴史的な協業の最初の成果物であるという点が重要です。企業の歴史的転換点に生まれた記念すべきモデルは、長期的には高い評価を受ける傾向にあります。実際、過去の自動車業界でも、企業合併や提携の際に生まれた最初のモデルが、後にコレクターズアイテムとして高値で取引されることは珍しくありません。
第二に、テージ H2の革新的な技術要素も将来的な価値を支える要素となるでしょう。ハブセンターステアリングというニッチながらも革新的な技術と、スーパーチャージドエンジンというハイパフォーマンス技術の組み合わせは、バイク技術史においても特筆すべきコンビネーションです。技術的に画期的なモデルは、時代を経てもその評価が下がりにくいという特徴があります。
第三に、製造方法も重要な要素です。テージ H2は、大量生産されるバイクとは異なり、多くのパーツがハンドメイドで製作されています。特にカーボンファイバーボディやアルミニウム削り出しパーツは、マシンの芸術性と職人技を体現するものであり、こうした要素は時間が経つほどに価値が高まることがあります。
実際に、過去のビモータモデルの中には、発売時の価格から大幅に値上がりしているものが多数存在します。例えば1990年代のTESI 1Dや、2000年代のDB5、DB6などは、現在では新車時の価格を大きく上回る値段で取引されることもあります。
テージ H2を単なる資産としてではなく、「走る芸術品」として適切にメンテナンスしながら所有することは、バイク愛好家にとって大きな喜びをもたらすと同時に、長期的には経済的にも合理的な選択となる可能性があります。特に未走行または極めて低走行距離の個体は、将来的により高い評価を受ける可能性が高いでしょう。
ただし、どんな投資にもリスクがあるように、バイクのコレクターズバリューも絶対的な保証はありません。将来の市場動向やバイク文化の変化によって、その価値は変動する可能性もあることを念頭に置く必要があるでしょう。
総括:ビモータ テージH2は価格も最高級の走る芸術品

- ビモータ テージ H2の新車価格は866万8000円(税込)で、世界限定250台の希少モデル
- カワサキのスーパーチャージドエンジン(242PS)とビモータのハブセンターステアリングの融合が最大の特徴
- アルミ削り出しパーツとカーボン素材を贅沢に使用し、熟練職人による手作り製法が採用されている
- トリコロールとカーボンの2種類のカラーバリエーションがあり、価格差はない
- 日本での正規輸入元はモトコルセで、予約販売制となっている
- 維持費は一般的なバイクより高く、年間のランニングコストを含めた予算計画が必要
- 中古市場では新車価格と同等か上回る価格で取引されることもある
- テージシリーズの歴史は1990年代のTESI 1Dから続く革新的なモデルライン
- 2019年のカワサキとビモータの協業により実現した歴史的モデルである
- 同価格帯の他の限定バイクと比較しても、独自技術による差別化要素が強い
- 将来的にはコレクターズアイテムとしての価値上昇も期待できる可能性がある
- ハブセンターステアリングによりブレーキング時の安定性が高く、強力なパワーをより安全に扱える
- 各部に最高級パーツを採用し、ブレンボ製ブレーキやオーリンズ製サスペンションを標準装備
- 高度な電子制御システムにより、242PSの強大なパワーを効果的に制御している
- 世界限定250台のため日本への割り当ては極めて少なく、入手難易度は非常に高い
最後に
今回は、ビモータ テージH2の価格について詳しく解説しました。
866万8000円という破格の価格設定の背景には、世界限定250台という希少性と、カワサキの最新技術とビモータの革新的設計哲学の融合があることが分かりました。この価格に見合う価値として、242馬力のスーパーチャージドエンジン、独創的なハブセンターステアリング技術、アルミ削り出しパーツやカーボンファイバー素材などの贅沢な素材使用、そして熟練職人による手作り製法が挙げられます。
バイク愛好家の皆さんが、特別なモデルを購入する際の参考になれば幸いです。
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