W230を手に入れたときから、「いつかスクランブラーに仕上げたい」と思っていた方は多いはずです。ティアドロップ型タンクとワイヤースポークホイールが醸し出すレトロな佇まいは、ブロックタイヤを履かせてアップマフラーを付けたら最高に映えるだろう——そんな妄想を胸に抱きながらも、「どこから手を付けていいかわからない」「アップマフラーにすると足つきが悪くなるって本当?」「結局いくらかかるの?」と、踏み出せずにいる方も少なくないでしょう。
W230のシート高745mmという安心感は、このバイクを選んだ理由の核心にあるはずです。その魅力を一切犠牲にせず、いかにスクランブラーらしさを積み上げていくか——24年のバイク経験をもとに、優先順位付きで徹底解説します。
この記事を読むと分かること
- W230がスクランブラーカスタムに向いている理由とKLX230シェルパとの本質的な違い
- シート高745mmの足つきを守りながらスクランブラーらしく仕上げる「外見アプローチ」の考え方
- タイヤ→マフラー→ガード類→ハンドル→サスペンションの5ステップ別パーツと費用の目安
- アップマフラー・車高アップカスタムを検討する際に必ず知っておくべきトレードオフ
W230がスクランブラーカスタムの理想的なベースである理由

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W230の基本スペックと車体特性を改めて確認しよう

カスタムを始める前に、ベース車両の素性をしっかり把握しておくことが大切です。W230の基本スペックを確認すると、スクランブラーカスタムとの相性の良さがよく見えてきます。
エンジンは233cc空冷4ストロークSOHC単気筒2バルブで、最高出力17.5PS(12.9kW)/7,000rpm、最大トルクは18.6Nm(1.90kgf·m)/5,800rpmを発生します。ミッションは6速リターンを採用。ボア×ストロークは67.0mm×66.0mmで、スクエアストロークに近い設計が低回転から扱いやすいトルク感を生んでいます。
車体面では、セミダブルクレードルフレームにシート高745mm、車両重量143kgという組み合わせが最大の特徴です。タイヤサイズはフロントが90/90-18インチ、リアが110/90-17インチ。最低地上高は150mmとなっており、この数値がスクランブラーとしての限界値を決める重要な指標になります。フロントサスペンションは37mmφ正立テレスコピック、リアはツインショック方式です。燃料タンク容量は12L、ABS付きモデルが標準仕様です。
価格は2025年モデルが643,500円(消費税込)、2026年モデルは新色2色追加で665,500円(消費税込)となっています。発売から約1年半を経て、BEAMSやキジマなどの主要アフターパーツメーカーからのラインナップも急速に充実してきており、今まさにカスタムを楽しむのに最適なタイミングと言えます。
フレームにサブフレームを接続するシンプルな構造は、追加パーツの取り付けポイントを確保しやすく、社外品の開発もしやすい設計になっています。
価格・スペック情報の取扱について
本記事の価格・スペックは2026年6月時点の参考値です。カワサキ公式サイトまたは販売店で最新情報をご確認ください。
「アーバンスクランブラー」と「本格オフロード仕様」どちらを目指すか
スクランブラーと一口に言っても、目指すべきスタイルによってカスタムの方向性がまったく異なります。最初にこの2つを明確に区別しておかないと、せっかくのカスタム予算が中途半端な仕上がりで終わってしまいます。
アーバンスクランブラーとは、街中に映えるクラシカルな雰囲気を重視しながら、オフロードのテイストを「外見」として取り込むスタイルです。ブロックパターンのタイヤ、個性的なサウンドのマフラー、ガード類で無骨さを演出しながら、日常の足としても十分に機能させる方向性です。W230の「圧倒的な足つきの良さ」を守りながらカスタムできるため、街乗りとツーリングをメインにする方に向いています。
一方本格オフロード仕様は、林道や未舗装路を実際に走ることを優先する方向性です。より長いサスペンションストロークで車高を上げ、大径ホイール化を図り、スキッドプレートで車体底部を保護する本格的なカスタムが必要になります。
この記事ではおもに「アーバンスクランブラー」を目指しながら、必要に応じてオフロード適性を高めていくアプローチを軸に解説します。W230の持ち味であるクラシカルな美しさを活かしつつ、段階的に自分好みのスクランブラーを作り上げていく方法です。
W230 vs KLX230シェルパ:カスタムベースとしての本質的な違い

スクランブラーカスタムを考えたとき、「最初からオフロード装備が充実しているKLX230シェルパの方がいいのでは?」という疑問が浮かぶのは自然なことです。両車は同じカワサキの233ccエンジンをベースとする兄弟車ですが、カスタムベースとしての性格はまったく異なります。
スペック面での主な違いを整理すると、ホイールサイズがW230はフロント18インチ・リア17インチであるのに対し、KLX230シェルパはフロント21インチ・リア18インチを採用しています。大径フロントホイールはダートでの障害物乗り越えに有利で、本格的なオフロード走行を想定した設計です。シート高もKLX230シェルパは845mmとW230より100mm高く、サスペンションのストロークも長く取られています。
さらにKLX230シェルパは、アルミ製スキッドプレート・金属プレート入りハンドガード・転倒時のエンジン保護バーが標準装備されており、リアABSをオフにできるスイッチまで搭載しています。言い換えれば、シェルパはメーカーが作り上げた「完成品のスクランブラー」です。
ではなぜW230をカスタムベースに選ぶのか?それはシェルパが持っていない「Wシリーズ固有の美しさ」にあります。ティアドロップ型燃料タンク、スチール製フェンダー、丸目ヘッドライト、クロームメッキのエキパイ——これらはシェルパでは決して得られないWシリーズの資産です。街中に停めたとき「何このバイク、かっこいい」と人の目を引く力は、W230が圧倒的に上です。
要するに、「自分の手でスクランブラーを作り上げる過程を楽しみたいか」「仕上がりのビジュアルにこだわりたいか」であればW230が最高のキャンバスです。一方「カスタムに時間・費用をかけず、すぐに林道を走り出したい」なら、KLX230シェルパを選ぶ方が合理的な判断と言えます。
KLX230シェルパについて詳しく知りたい方へ
KLX230シェルパの実力と評判については、KLX230は不人気?2025年シェルパで覆る5つの真実で詳しく解説しています。
143kgと745mmというスペックがスクランブラーにもたらす絶対的優位

スクランブラーとして未舗装路を走る際、最も重要なスペックの一つが「車重の軽さ」です。バランスを崩したときにリカバリーできるかどうか、これがダートではすべてと言っても過言ではありません。
W230の車両重量は143kgです。このクラスのライバルと比較すると、ホンダGB350Sが178kg、ロイヤルエンフィールドBullet 350が195kgです。W230はGB350Sより35kg、Bullet 350より実に52kg軽い計算になります。大人一人分以上の重量差がある、と言えば伝わりやすいでしょうか。
そしてシート高745mmは、軽二輪クラスでもトップクラスの低さです。林道でバイクを止めるとき、足をしっかり地面につけられるかどうかは精神的な余裕に直結します。「地面に足が届かないかもしれない」という不安があると、ライダーは無意識のうちに体が緊張して、かえって操作が雑になりがちです。
W230の軽量・低シートがスクランブラーカスタムにもたらす恩恵
- バランスを崩した際のリカバリーが容易(重量差で体力消耗を軽減)
- 林道での停車・方向転換が不安なく行える
- カスタムパーツを追加しても重量増を最小限に抑えやすい
この「軽さと低シート高」という組み合わせを武器にしていることが、W230がスクランブラーベースとして輝ける大きな理由なのです。
ワイヤースポークホイールとティアドロップタンクが作る唯一無二の素材感
スクランブラーカスタムの美しさは、ベース車両が持つデザイン資産をどれだけ活かせるかにかかっています。W230はその点で、現代の250cc・230ccクラスの中で群を抜いた素地を持っています。
Wシリーズのデザインルーツは1966年のカワサキ「W1」にまで遡ります。英国のヴィンテージバイクをオマージュしたその美学——丸目ヘッドライト、シングルシートから続くティアドロップ型タンク、スチール製のフロント・リアフェンダー、そしてワイヤースポークホイール——が、現代のW230に脈々と受け継がれています。
これらの要素は、スクランブラーカスタムの文脈と非常に相性が良いものです。1960〜70年代に活躍した本物のスクランブラーは、まさにこのような構成のバイクでした。ブロックタイヤを装着したとき、アップマフラーを取り付けたとき、エンジンガードを追加したとき——それぞれが「もとからそこにあったかのよう」に馴染むのは、W230のデザイン資産がそれだけ本物だからです。
実際に、タイのカスタムショップ「WSW Custom Bike」や「K-SPEED」がW230をベースに制作したカスタムバイクは発売直後から大きな話題を呼びました。ブルー&ホワイトの2トーンペイントにブロックタイヤ、ショートフェンダーを組み合わせたスタイルは、W230のデザインポテンシャルを世界に示した事例です。
▶ Webikeプラス:タイの「K-SPEED」と「WSW Custom Bike」によるW230カスタム事例(外部サイト)
「スクランブラー」と「トラッカー」の違いとは
スクランブラーは舗装・未舗装両用のオールロードイメージ、トラッカーはフラットトラックレースから派生したダートオーバルのイメージです。詳しくはトラッカーとスクランブラーの違いは?歴史と機能で徹底比較をご覧ください。
スクランブラーカスタムの全体費用感と優先順位の考え方

いざカスタムを始めようとしたとき、「全部やるといくらかかるんだろう」という不安が先に立つことがあります。W230のスクランブラーカスタムにかかる費用は、どこまでやるかによって大きく異なりますが、以下のようなロードマップで考えると整理しやすいです。
| ステップ | 内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| Step 1 | タイヤ交換 | 2〜4万円程度 |
| Step 2 | マフラー交換 | 5〜10万円程度 |
| Step 3 | プロテクションパーツ追加 | 2〜5万円程度 |
| Step 4 | ハンドル周りのオフロード化 | 1〜3万円程度 |
| Step 5 | サスペンション調整・車高アップ(上級) | 5万円〜 |
費用情報の取扱について
本記事の費用目安は2026年6月時点の参考値です。パーツ価格は市況・為替・在庫状況により変動します。購入前に各ショップでの最新価格をご確認ください。
足つきを守りながらカスタムする「外見アプローチ」の基本原則
W230を選んだ多くの方の最大の理由が、シート高745mmという低さから生まれる「安心の足つき性」です。スクランブラーカスタムを進める際に最も気をつけなければならないのは、この魅力を誤ったカスタムで損なってしまうことです。
「外見アプローチ」とは、サスペンションやシートには手を加えず、タイヤ・マフラー・外装ガード類・ハンドル周りのパーツ変更だけでスクランブラースタイルを作り上げるアプローチです。シート高が数値上まったく変わらないため、純正の足つき性を100%維持できます。
また、車高を上げるサスペンション変更は後述のステップ5で詳しく解説しますが、これはシート高が実際に高くなり、停車時のリカバリー難易度が上がります。「最低地上高150mmをどうにかしたい」という気持ちは理解できますが、本格的な林道走行を想定するなら最初からKLX230シェルパを選択する方が現実的なケースも多いです。
「外見アプローチ」の基本原則は、「まず横幅と質感を変える。縦方向(高さ)には手を出さない」です。ガード類でボリュームを持たせ、タイヤのパターンを変え、マフラーの音を変える——これだけでW230は十分にスクランブラーらしい一台に生まれ変わります。
W230スクランブラー化の5ステップ実践カスタムガイド

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ステップ1:タイヤ交換|最もコスパ高くスクランブラーらしさが出る定番手法

スクランブラーカスタムの第一歩として、ほぼすべての専門家が口を揃えるのが「まずタイヤから変えよう」です。理由は明快で、費用対効果が抜群に高く、しかも足つき性への影響がゼロだからです。純正のロード向けタイヤとは異なるブロックパターン(または力強いトレッドパターン)のタイヤに変えるだけで、バイクの雰囲気は劇的に変わります。
W230の純正タイヤサイズは、フロントが90/90-18、リアが110/90-17です。このサイズに適合し、スクランブラースタイルに似合う代表的なタイヤを3種紹介します。
① ダンロップ TT100GP(最もおすすめの定番)
英国の伝統的なトレッドパターンを受け継ぎながら、現代のコンパウンド技術でアップデートされたバイアスタイヤです。「オンロード・ハイグリップ」のカテゴリに属し、クラシカルで少し無骨なトレッドパターンがW230のビジュアルに完璧にマッチします。Webikeのタイヤ売れ筋ランキングでもW230向けのフロント・リアともに上位を占める安定したセラーです。
② ブリヂストン ACCOLADE AC01(フロント)/ AC02(リア)
ビンテージ感あふれるトラディショナルなパターンが特徴。本格的なブロックタイヤほどアグレッシブではなく、街乗り中心の「アーバンスクランブラー」仕様に向いています。レトロな質感はW230のデザインとの相性も良好です。
③ IRC Trails GP(オンオフ両用の参考候補)
KLX230シェルパの純正採用タイヤ。オンロード・オフロード両用として知られますが、W230のサイズへの適合については購入前にバイクショップで確認することを強くおすすめします。
タイヤ交換時の注意
タイヤの価格・在庫状況は2026年6月時点の参考情報です。購入前に最新情報をご確認ください。また整備は自己責任で行いましょう。
ステップ2:マフラー交換|エンジン鼓動感を引き出す2つの選択肢

タイヤが「見た目」を変えるなら、マフラーは「音と雰囲気」を変えます。W230の純正マフラーは、往年の名車をモデルにしたストレート構造の「ピーシューター型」で、軽やかで滑らかな排気サウンドが特徴です。これをアフターマーケット品に変えることで、空冷単気筒らしい鼓動感がより際立ち、スクランブラーとしての個性が増します。
現在、W230向けにJMCA(全国二輪車用品連合会)認定のフルエキゾーストマフラーをリリースしているのがBEAMS(ビームス)です。2種類をラインナップしており、それぞれ特徴が異なります。
① ST TREK TYPE(スクランブラー志向の方に特におすすめ)
スポーティなラウンドサイレンサーを採用したモデルです。純正の排気音量が85.0dBであるのに対し、こちらは93.0dBと音量がアップし、重低音による迫力あるサウンドを楽しめます。スクランブラースタイルに非常にマッチするタフな外観が特徴で、パーツ重量も純正の約7.85kgから約4.1kg前後と大幅に軽量化されます。
② TT CABTON TYPE(純正スタイルを崩したくない方向け)
純正の「ピーシューター(キャブトン)」スタイルを崩さずに、より存在感のあるルックスとサウンドを求める場合のモデルです。音量は92.0dBで、こちらも大幅な軽量化効果があります。
両モデルともJMCA認定品のため公道での使用が認められており、安心して装着できます。純正比で約半分の重量まで軽量化できることも、W230の軽快なハンドリングをさらに磨く効果として評価されています。
足つきを優先するならダウンタイプを選ぶべき理由についても整理します。アップマフラーは見た目のインパクトが大きい反面、マフラーがライダーの足のすぐ横を通るため、停車時にガニ股になる必要が生じます。BEAMS製の2種はいずれも車体下を通るダウンタイプのレイアウトですので、足つき性を一切変えずにスクランブラーらしい音と軽さを手に入れることができます。
もしアップマフラーにこだわる場合は、エキゾーストパイプに耐熱バンテージ(サーモバンテージ)を巻くこと、ヒートガードを装着すること、そして走行時は厚手のパンツや膝プロテクター付きのライディングパンツを着用することが必須です。
BEAMSマフラーのご購入前に
BEAMSマフラーの音量dB値・JMCA認証番号はBEAMSメーカー公式サイトでの最終確認を推奨します。本記事の数値は2026年6月時点の情報に基づきます。整備・取り付けは自己責任で行いましょう。
ステップ3:プロテクションパーツ追加|エンジンガードとハンドガードで本格感を

スクランブラーの「タフな雰囲気」を最も効率よく演出できるのが、プロテクションパーツの追加です。エンジンガードやハンドガードはその名の通り車体・乗り手を保護するための実用品ですが、同時にバイクに視覚的なボリュームと無骨な存在感をもたらすドレスアップ効果も持ちます。しかも車高を変えないため、足つきへの影響は一切ありません。
カワサキ純正エンジンガード(品番:99994-2262)
カワサキがW230の純正アクセサリーとしてラインナップしている専用パーツです。直径22mmのスチールパイプ製で、美しいクロームメッキ仕上げが施されています。W230のレトロなスタイリングを損なわずにエンジン周りを保護し、立ちごけ時のダメージを軽減します。ボルトオン(加工不要)で装着でき、取り付けに必要なボルト類と説明書が同梱されています。日本国内での価格は正規取扱店でご確認ください。
Hepco & Becker(ヘプコ&ベッカー)製クラッシュバー
ドイツの著名なアフターマーケットメーカーが展開するW230(2025〜2026年モデル)向けのクラッシュバーです。純正のクローム仕上げとは異なり、よりタフで無骨なルックスが特徴で、スクランブラーらしさをより強調したい場合の上位選択肢です。
次に、ハンドル周りのハンドガードも合わせて検討することをおすすめします。「Barkbusters(バークバスターズ)」のVPS-MXシリーズは、7/8インチ(22.2mm径)のハンドルに対応するマウントキットで装着でき、金属フレーム入りの頑丈な構造が特徴です。林道での小枝や飛び石から手を守るだけでなく、転倒時のレバー折れを防ぐ実用的な装備であり、フロント周りの視覚的なオフロード感を一気に高めるアイテムでもあります。
さらに、カワサキ純正のリアキャリア(品番:99994-2098)もスクランブラーらしさを演出するのに有効なパーツです。クロームメッキスチール製で、キャンプ道具などをくくりつけることで「道具として使い倒すバイク」というスクランブラーの精神を体現できます。またニーパッドセット(品番:99994-2097)はタンクサイドに貼り付けるスリップ防止パッドで、未舗装路走行時のニーグリップ安定性を高める実用品でもあります。
純正パーツの価格について
純正パーツの品番・価格は日本国内の正規販売店でご確認ください。2026年6月時点の参考情報です。
ステップ4:ハンドル周りのオフロード化|ブレースバーとライザーの効果
タイヤ・マフラー・ガード類によって車体の印象は大きく変わりますが、「乗り味」を変えたい場合はハンドル周りへのアプローチが有効です。ハンドルの位置・形状を変えることで、未舗装路でのスタンディング(立ち乗り)時の操作性が格段に向上します。
最も効果的なのがハンドルバーライザーの追加です。ハンドルの位置を2〜3cm上げ、わずかに手前に引くことで、体を立てた状態でのコントロールがしやすくなります。シート高は変わらないため足つき性への影響はなく、ポジション改善効果だけを得られます。コスト面でも比較的安価に実施できるため、気軽に試せるカスタムのひとつです。
より本格的なアプローチとして、レンサル(Renthal)製の7/8インチストリートハンドルバーへの交換も選択肢に入ります。レンサルはオフロードハンドルの名門ブランドで、剛性の高いバーに変更することでフロント周りのタフな印象が増します。スクランブラースタイルの定番として、中央に補強用の「ブレースバー(クロスバー)」が入ったオフロードスタイルのハンドルも人気が高く、W230のビジュアルに非常によく馴染みます。
ハンドル交換時に必ず確認すべきポイント
- ブレーキホース・クラッチケーブル・アクセルワイヤーの長さ不足に注意
- ABSセンサーの配線が引っ張られていないか確認する
- 車体幅が2cm以上増加する場合、構造変更の届け出が必要になることがある(250cc未満でも)
整備上の注意
ハンドル交換を含む改造は保安基準に適合していることを確認してから行ってください。整備は必ず自己責任で行い、自信がない場合はプロのショップに依頼してください。
ステップ5:サスペンション調整と車高アップ(上級編)|足つきとのトレードオフ

ここまでのステップ1〜4はいずれも「足つきに影響しないカスタム」でした。ステップ5はその原則を外れ、意図的に車高を上げることで最低地上高を拡大するカスタムです。林道走行の本格適性を高めたい場合に有効ですが、それ相応のトレードオフと追加費用が発生することを理解した上で進める「上級者向け」の内容です。
最低地上高150mmのままでも、砂利道や整備された林道であれば十分に楽しめます。しかし深い轍や岩場、急な傾斜がある未舗装路では150mmが底を打つ場面が出てきます。車高アップでこれを改善しようとするなら、主な方法として「より長いリアショックへの交換」「フロントフォークの突き出し量変更」などがあります。
しかし、車高を上げることで発生するデメリットがあります。以下の5点を必ず把握した上で進めてください。
車高アップカスタムの5つのデメリット
- シート高が実際に上がり、停車時の足つきが悪化する
- 重心が上昇し、低速でのフラつきや横風への感受性が増す
- 純正サイドスタンドが相対的に短くなり、転倒リスクが高まる(要延長)
- ブレーキホース・ABSセンサー配線・クラッチケーブルが長さ不足になる場合がある
- スイングアームの角度が急になり、ドライブチェーンの張り調整が難しくなる
よくある質問(FAQ)
W230のスクランブラーカスタムについて、よく寄せられる質問にお答えします。
Q. W230はスクランブラーカスタムに向いていますか?
A. 非常に向いています。143kgの軽量ボディ、シート高745mmの低さ、ワイヤースポークホイール・ティアドロップタンクのクラシックデザインという3要素が、スクランブラーカスタムの理想的な素地を作っています。特に「外見から入るカスタム」との相性は抜群です。
Q. アップマフラーにすると足つきは本当に悪くなりますか?
A. 数値上のシート高は変わりませんが、マフラーが太ももの横を通るためガニ股で停車する必要が生じます。体感的な足つき性は悪化します。足つきを重視するなら、BEAMS製のダウンタイプ社外マフラーを選ぶことをおすすめします。
Q. タイヤだけ換えてもスクランブラーらしく見えますか?
A. 見えます。ダンロップTT100GPのようなクラシカルなパターンのタイヤに変えるだけで、バイクの印象は明確に変わります。費用対効果が最も高く、足つきへの影響もゼロなので、最初の一手として最適です。
Q. W230とKLX230シェルパ、スクランブラーベースにするならどちらですか?
A. 「自分でスクランブラーを作る楽しさ+クラシカルなビジュアル」ならW230、「購入後すぐに林道を走れる完成品」ならKLX230シェルパです。本格的なオフロード走行が主目的であれば最初からシェルパを選ぶ方が合理的です。
Q. スクランブラーカスタムの費用はどのくらいですか?
A. タイヤ交換のみなら2〜4万円程度。タイヤ+マフラー+エンジンガードのステップ1〜3までで10〜20万円前後が目安です(2026年6月時点・参考値)。パーツ価格は市況により変動します。
まとめ:W230スクランブラー化を始める前に押さえておくべきポイント
W230は、その軽さ・低シート高・クラシカルなデザイン資産の3点から、スクランブラーカスタムのベース車両として最高の素地を持っています。「何から始めるか」「どこまでやるか」の方針を持ちながら、段階的にカスタムを進めることが後悔しない近道です。
- W230の143kgと745mmの組み合わせはスクランブラーカスタムの理想的な素地
- 足つきを守るなら「外見アプローチ」(タイヤ・ガード類・マフラー)から始める
- 本格オフロードが目的ならKLX230シェルパの方が装備面で最初から充実している
- タイヤ交換(ダンロップTT100GPなど)はコスパ最大で見た目の変化も大きい
- BEAMS製フルエキゾーストマフラーは純正比約3.9kg軽量化と迫力サウンドを両立
- 足つきを守りたいならアップマフラーよりダウンタイプ社外マフラーが正解
- アップマフラーを選ぶなら耐熱バンテージまたはヒートガードは必須装備
- 純正エンジンガード(品番99994-2262)はボルトオンでレトロ感を守りながらエンジン保護
- Hepco & Becker製クラッシュバーはよりタフな無骨感を求める場合の上位選択肢
- Barkbusters等のハンドガードはオフロード感の演出と転倒時のレバー保護を両立
- 車高アップカスタムはサイドスタンド延長・ホース延長が必要になり出費が重なる
- タイヤ外径変更時はユーザー車検での申告を忘れない
- カスタム時はABSセンサー配線の取り回しに注意が必要
- まずタイヤから始めれば2万円台でスクランブラーらしさが体感できる
最後に
W230はデザインの素材として本当に恵まれた一台です。「まずタイヤから」という小さな一歩が、気づけば自分だけのスクランブラーへの長い旅の始まりになる。24年バイクに乗ってきたなかで、カスタムの楽しさはその過程にあると確信しています。焦らず、段階を踏んで、W230との時間を楽しんでください。
W230のスクランブラーカスタムと並行して、兄弟車のメグロS1の評価や、「スクランブラー」というジャンルそのものへの理解を深めておくと、カスタムの方向性がより明確になります。また、同じ233ccエンジンを積むKLX230との比較や、CB223SのスクランブラーカスタムもW230の参考になるはずです。